ボスワースは2017年にフェイスブックのAR/VR部門を立ち上げ、VRヘッドセットのオキュラスの開発を統括したほか、最近では、マーク・ザッカーバーグが最重要視する仮想空間「メタバース」関連の取り組みを担っている。
「今回の人事異動は、メタバースの構築に向けた取り組みの基盤となるものであり、ボズのリーダーシップに期待している」とザッカーバーグは声明で述べた。
一方で、シュロップファーは、来年からフェイスブック初のシニアフェローとなり、人材の確保と少数のプロジェクトを監督する立場になる。
今回の人事は、フェイスブックにとっての大きな転換点を示している。ザッカーバーグは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)のテクノロジーを利用したメタバースなどの新規のプロジェクトを推進し、昨年から同社のチーフ・エバンジェリスト的立場でメディアのインタビューに応えている。
同社はコア事業のフェイスブックやインスタグラムのオペレーションについて、依然として議員やメディアの厳しい批判を浴び続けているが、ザッカーバーグはこれらの問題を軽視するスタンスを崩していない。
ボズワースをCTOに昇格させたのは、ザッカーバーグが今後も現在の道を歩む決意を固めていることを示す明確なシグナルと言える。ボズワース自身も、以前からザッカーバーグの姿勢を擁護してきた。2018年のバズフィードの記事によると、ボスワースは数年前に執筆した社内向け資料で、ケンブリッジ・アナリティカの問題につながったデータ収集の在り方を正当化しつつ、同社が今後直面し得るリスクを解説していた。
一方で社内の関係者からは、シュローファーの退任が、フェイスブックの社会的責任をおろそかにすることにつながるのではないかという懸念の声も浮上している。
新CTOはザッカーバーグの長年の盟友
ボズワースとザッカーバーグは、古くからの同胞だ。2人は、ハーバード大学でザッカーバーグがコンピュータサイエンスのクラスを受講し、ボスワースがティーチングフェローを務めていた時代に知り合った。
ボズワースは、マイクロソフトに勤務した後の2006年にフェイスブックの最初のエンジニアのひとりとして入社し、ニュースフィードやメッセンジャー、グループなどの初期のプロダクトの多くを開発した。
ボズワースが入社した当時のフェイスブックのユーザー数は、わずか500万人だった。彼はハーバード大学のインタビューで、当時を回想し、「私たちは皆、常に大量の異なる機能を作ろうとしていた。トライしてみたいことを常に考えて試行錯誤していた」と語っている。