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2021.10.22

ユニコーン輩出世界2位。世界の投資マネーが集まる北欧8カ国「baltic 8」

2018年、スウェーデン生まれのSpotifyはNASDQ NYに上場した。


北欧のスタートアップのトレンド(領域やビジネスモデル)


Clean又はGreen Technologyが注目領域となっています。有名事例としては、今年100億ドルの時価総額でナスダックの上場したスウェーデンの代替ミルク(植物性ミルク)の「Oatly」や、ユニコーンの仲間入りをしたTeslaマフィアが創設のリチウムイオン電池開発「NorthVolt」。なお、国連が発行する『Sustainable Development Report 2021』内のSDGsランキングでは、1位をフィンランド、2位をスウェーデン、3位をデンマークが獲得。上位10カ国のうち5カ国が北欧・バルト地域となっています。

データの可視化も注力分野で、フィンランドの「Upright Project」というスタートアップも注目され、同社は独自の計量モデルを活用し、個別企業の良い面と悪い面を計測。そのネット・インパクト(社会への正味の影響)を算出しています。具体的には、対象企業の財務データだけでなく、教育、職業訓練、温室効果ガスの排出、社会資本、知識といった項目を細分化して、AIを活用しデータを収集し「正味の影響」を算出するものです。

経済的価値と同じくらい、社会的価値が重視される時代に突入し、企業の財務的な持続可能性だけでなく、「社会的に持続可能なのか」が投融資先や取引先の選定に係る物差しになることも見据えると、同社のようなネットインパクト等を算出する機関が遠くない将来、新たな「格付け機関」となる可能性もあります。

SPACの活用


これまで北欧ではSPAC上場が認められていなかったのですが、米国でのSPACブームに追随する動きを見せ、今年の2月のNasdaqストックホルムでの上場解禁を皮切りに、ヘルシンキ、コペンハーゲンでも最近解禁となりました。

北欧SPACルールが他国違う点は、主に2つ。

1点目は、SPAC上場後、買収完了までの期間が米国では通常24か月であるのに対し、北欧では当該期間が36か月であること。2点目は、買収が発表された後でも買収取引が完了するまではSPAC投資家は自身が保有する株式を償還(償還株式)することが可能である点。欧州で最もSPACを積極的に推進しているロンドン証券取引所では、買収発表後は基本的に株式の償還ができないため、北欧はより投資家フレンドリーなルールを作り投資家を惹きつける狙いがあります。
※償還株式=利益による償却が予定されている株式。発行会社は一時的な資金調達に活用でき、投資家は社債と同様に確実な投資対象になる。

上述のとおり、北欧でのSPAC解禁は最近であるため、PitchbookによるとSPAC上場の件数はまだ5件のみで、買収は未了。一方、北欧企業がSPAC買収された例でいくと、ノルウェーの「Freyr」というリチウムイオン電池のスタートアップで、今年1月にニューヨーク証券取引所上場のSPACで買収。なお、このFreyrは日本人がCTOを務める会社で、住友商事が子会社経由で出資しています。

コロナ禍で、米国のVCが北欧のスタートアップに投資が増加している背景


コロナ発生後、ZoomやTeamsでのピッチが日常化し、直接対面で起業家と会わずとも投資をするという一種の腹の括り方が投資家の中で起きたことにより、世界全体でVC投資の国境がなくなりつつあリます。

また、リモートワークが日常化している中で、高い固定費を維持しつつシリコンバレーに拠点を構えることに疑問を持ち始めた起業家やスタートアップがシリコンバレーから出始めていることもあり、米国投資家がより欧州のスタートアップに関心を持つことは自然な流れと言えるでしょう。事実、米国の欧州向け投資は急増しています。(下記グラフは2021年5月時点)

米国の欧州への投資額推移
米国による欧州スタートアップへの投資額推移

北欧限定での公開データはありませんが、例えばリトアニアのリモート同時通訳サービス「Interactio」は最近、北欧バルトで最大級のAラウンドをcloseし30百万USDを調達しましたが、リード投資家はシリコンバレーVCのStorm Venturesです。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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