フェスティバル自体は今年で30年目を迎え、小澤征爾が80歳を迎えた2015年からフェスティバル自体はサイトウ・キネン・フェスティバル松本からオザワの名前にアップデートされた。その小澤征爾が師・齋藤秀雄の名前を冠した手兵サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)とともに至高の音楽を奏でる松本市が世界に誇るイベントである。
このイベントのために、世界中から小澤征爾と親交のあるアーティストたちが集まってくる。オーケストラのメンバーもそうだが、ピアニストのマルタ・アルゲリッチが来日し小澤征爾の80歳をピアノで祝った年もあれば、ファビオ・ルイージなど錚々たるマエストロがタクトを振りに来日したこともある。
シャルル・デュトワ (c) 山田毅/2021OMF
去年は残念ながらコロナの影響でイベント自体が中止になってしまったのだが、今年はフェスティバルの実施が5月に発表された。御年84歳のシャルル・デュトワが初めてSKOを指揮するという聴き逃がせないメインプログラム。嬉しいニュースに心を躍らせ、2年ぶりにサイトウ・キネンの音を松本で聴けるのを心待ちにしていた。
小澤さんは体調もあり、ここ何年かは残念ながら公式のプログラムでは指揮台に立ててはないのだが(2019年には小澤征爾スイス国際アカデミーのの公演にサプライズで登場し、ベートーヴェンを振った)、メイン公演のチケットは例年通りあっという間に完売となっていた。
しかし、コロナの感染者が増え続ける中でのパラリンピックの開幕式の直前、8月24日に小澤総監督の「心が張り裂けるようなつらい判断に悲しんでいます」というコメントともに、今年も全公演中止という決定が報じられた。
「最終的には実行委員長でもある松本市長の判断で、県外からも多くの観客が訪れる公演である点、市内の病床の使用率を鑑みての泣く泣くの判断でした」と実行委員会の松林事務局長は語る。