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新しいものを生み出すときに活かされる、物理の思考


8月に成功をおさめた、マンホールの情報収集イベント。しかし、この事業はここで終わりではない。WEFはこれをステージ1と捉えており、ここから先は、ステージ2として防災減災を、さらに最終的には、ステージ3として環境問題や人口減少による空き家問題など、ESG視点を含めた多様な評価軸で情報を可視化していきたいと考えている。

課題は複雑だが、このように複雑なことを単純化し、わかりやすく説明することで進むべき道筋が見えてくる。森山氏は、この力を大学時代に学んだ「物理」で培った。

物理では、本来複雑である自然のさまざまな要素を一旦無視して考える。「ボールを落としたら、まっすぐ下に落ちる」という設定からスタートし、そこにプラスアルファでいろんな要素を追加していくのだ。

このマンホールのインフラ事業では、経済合理性を考えることからスタートした。しかし、実際のところ、人間はコスト効率だけで生活しているわけではない。そこで、ステージ2、ステージ3と要素を追加し、順繰りに進めていく。最初からステージ3を実現するのは不可能だからだ。

イーロン・マスクもTED2013の対談で、「何か新しいことをしようという時は物理学のアプローチを使う必要がある」と述べている。先に紹介した加藤崇氏も、物理の出身だ。

森山氏は「今、僕たちはステージ1にいるんです」と言うが、それはつまり、ステージ3に向かう道の途中であり、確実に目指す社会へ近づいていると言えるだろう。



目指すは、利益よりもインパクトが評価されるエコシステムの実現


マンホールのイベントは、事後アンケートから面白いデータが得られた点も興味深い。

このイベントには、初回ということもあり、個人のトップに10万円、団体のトップに30万円という賞金が用意されていた。しかし、アンケートによると、参加の動機の多くは賞金ではなく、「インフラの課題解決につながるというコンセプトに興味を持った・共感したから」だったのだ。やはり、誰しも世の中のために何かしたい、誰かの役に立ちたいと思っているのだろう。

文=伊藤みさき 写真=藤井さおり、インタビュー・編集=谷本有香

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