ガン・バイオレンス・アーカイブは2013年以降、銃撃事件を追跡・記録しており、銃撃による1日あたりの死者数は一般的に上昇傾向にあると説明している。2020年はここ数十年で最も死者が多い年となり、銃による暴力で命を落とした人は2万人近くに上った。それに加えて、銃による自殺者は2万4000人いる。
パンデミック中は犯罪が全体的に減少したが、銃による暴力と殺人はこの傾向に逆行した。社会不安の増加、裁判所と警察の業務中断、格差拡大がその要因になった可能性がある、と専門家は示唆している。
パンデミック中には、人々が所有する銃の数も増えた。犯罪歴などを確認するバックグラウンドチェック(身元調査)なしで銃を購入した者は約30万人にのぼる可能性がある。2020年に販売された銃は2300万丁と、前年比で3分の2増加した。2021年には販売数が減少に転じたが(2021年に入ってからこれまで、およそ1340万丁が販売された)、それでもパンデミック前の水準を大きく上回っている。
米国の主要な公衆衛生機関である疾病予防管理センター(CDC)は、銃が原因で毎年多くの人命が失われているにもかかわらず、銃暴力による脅威への取り組みに消極的だった。主な理由は、激しい政治的圧力とロビー活動により、銃問題のための予算が削減されてきたことだ。
米大統領ジョー・バイデンは、2021年4月に連邦議会で演説した際に、銃暴力は「エピデミック(大規模な伝染病)」だと嘆き、米国が「世界にさらす恥」だと述べた。これを受けて、CDCのロシェル・ワレンスキー所長は8月にCNNで、過去数十年にわたるCDCの沈黙を破るかたちで発言。銃暴力は「公衆衛生を脅かす深刻な脅威」であると述べ、対策に取り組むことを誓った。
1万4490人。ガン・バイオレンス・アーカイブが発表したこの数字は、2021年に入ってから本記事公開までに、銃による暴力が原因で命を落とした人数だ。これに加えて、CDCのデータをもとにした計算では、2021年に入ってから1万7094人が銃で自殺している。