プロキックボクサーの挫折から奮闘。広告運用のスペシャリストへ

植野大輔(左)と藤原彰二(右)

CxO(シーエックスオー)は、トップであるCEOを組織の要として支えるスペシャリストたち。CCO、CFO、CIO、CLO、CMO、COO、CSO、CTO……こうした役職に必要な能力と条件、その立場から得られる知見とは? ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ。

プロスポーツの挫折から奮起して、広告運用のスペシャリストへ。CMOを経験後、COOとして組織を率いる出前館取締役 藤原彰二の人材育成論。


植野:新卒で就職せず、いったんプロキックボクサーの道に進まれたと伺いました。

藤原:大学3年のとき飲食店のバイト先で誘われ、半年でプロになれました。大学を卒業して3カ月ぐらいで眼底骨折をやってしまい、これ以上続けるのもよくないと診断されて引退したんです。

植野:卒業して3カ月でキャリアは真っ白。

藤原:最初に入ったフルスピードは応募を間違え、営業でなく広告運用を担当しました。第二新卒扱いだから人の10倍は頑張ったな。そのうち会社が上場して全員を営業職に変えることになり、さらに運用を極めたくてトランス・コスモスに転職しました。

植野:リスティングなどガリガリ運用された。

藤原:それが2年間。次に友人と会社をやったので、起業といえば起業なんですが、あまり自分ではスタートアップに関心がなかった。

植野:どうしてですか?

藤原:手がけるサービスを使う人を、この目で実際に見たいんですよ。自分でスタートアップをやってもそれが実現する可能性は低い。ここ数年で上場した企業は、ほぼto Bのサポート系でしょう。

僕は親父が道路会社にいて、小さいころ、レインボーブリッジができたときに連れて行かれ「こういう仕事をしたんだ」と話してくれたのを覚えています。以前、うちの子が3歳ぐらいのとき「パパはLINEでお仕事しているんだ」と言ったら、すごく喜んで「きっと僕もこうだったんだろうな」と。そんな理由もあって仕事の選択がto Cに寄ったと思います。

植野:原体験ですね。うちの子はいまだに「パパのファミペイのお店に寄りたい」って。「父さん、もう違う仕事してるんだ」と言いますが(苦笑)。

藤原:電車でSNSやゲームをスマホで操作している人を見て「こうして自前のサービスを眺める機会 って、to Bのウェブ系の人はないな」と憧れていました。僕がやっていた不動産売却では、売り上げがバンと上がっても仕事の手応えがなくて。いくら売れたかは数字でわかるんですけど。
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文=神吉弘邦 写真=高橋マナミ

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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