プロキックボクサーの挫折から奮闘。広告運用のスペシャリストへ

植野大輔(左)と藤原彰二(右)


植野:そんなにいっぱい数字があるわけじゃないんですね。すごくシンプル。

藤原:こちらから「あなたのKPIはこれです」と伝えます。自分で出すKPIは甘くなってしまうので。 MBO(※3)も全部廃止しました。

※3 MBO(目標管理制度) Management By Objectivesの略で、従業員が自律的に目標を設定する人事評価制度のこと。親会社やオーナーから株式や経営権を買い取って独立する経営陣買収(Management Buy-Out)も同じくMBOと略すので注意。

ただ、僕は数字の達成よりもプロセスを大事にしたい。再現性がないものが嫌いなんです。自分の仕事に再現性があり、ほかの会社でも通用するような人材を育てたい。人事でも「プロセスがよいからOK」という評価が多いです。

植野:仕組み化を求めるんですね。ラッキーパンチが当たっても評価しないよと。藤原さん自身は仕組みづくりに細かくかかわるのか、仕組みづくりを指示して上がってきたものを現場と壁打ちしながらブラッシュアップしていくのか。どっちの役割ですか?

藤原:僕はどちらでもなく、自分でも同時につくって見せて、現場と勝負したいタイプかな。CEOは説明を受けて判断することが多いですが、Cがつく専門職は現場感をもつべきです。自分で手を動かさなきゃいけない。経営感覚に加えて、組織を横断するバランス感覚をもたないといけないし、個人のテクニック論も必要です。

植野:会社をつくれば名乗れるCEOに比べ、専門性を備えたCxOになるほうが難しい。リーダーの劉備玄徳より、軍師の諸葛亮孔明になるほうがよほどの難関だと。

藤原:だから自分がCOOを外れる日が来るとしたら、 IT系のノウハウに追いつけなくなって自分で作業できなくなったときです。いま会社では「出前館バージョン2」をつくろうと半年くらいかけて頑張っていますが、僕が今日描いた絵は、もう「バージョン4」(笑)。そうやって手を動かし続け、ビジョンを掲げてリードする。CxOはそんな役割だと思います。

「CxO」のビジョン、三カ条(藤原彰二)

一、一日、1つ以上の「決断」をこなすこと。
二、複眼的な思考による「時空間把握能力」をもて。
三、自ら学び、手を動かし、ビジョンを描き続ける。


藤原彰二◎1984年生まれ。2006年からマーケターとしてのキャリアをスタートし、複数のWebコンサルティング会社で実務責任者を歴任。15年、LINE入社。19年、LINE O2Oカンパニー カンパニーエグゼクティブCMOとしてショッピング、グルメ、トラベルの領域で6サービスを立ち上げ、2000億円超の市場創造に貢献。LINE Pay CMOを経て、20年6月より現職。近刊は『「素朴な問い」から始める出前館のマーケティング思考』。

植野大輔◎DX JAPAN代表。早稲田大学政治経済学部卒業、MBA取得、商学研究科博士後期課程単位満了退学。三菱商事入社、ローソンへ約4年間出向、PontaカードなどのDXを推進。ボストンコンサルティンググループを経て、ファミリーマートへ。ファミペイの垂直立ち上げなどDXを統括・指揮。2021年よりANDPAD上級執行役員CMO。

文=神吉弘邦 写真=高橋マナミ

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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