プロキックボクサーの挫折から奮闘。広告運用のスペシャリストへ

植野大輔(左)と藤原彰二(右)


植野:現在はCOO。役職が変わっても、やることは「問題解決」だから変わらないですか?

藤原:そうです。出前館はCMOがいないのでマーケティングコミュニケーション本部に任せています。

植野:数字は見るんですよね?

藤原:見ています。これだけはダメという場合は、すぐに修正をかけることがまれにあります。

植野:数字には厳しい。

藤原:本当はやりたくないですけど。仕事を楽しめる人が増えてほしくて、そのためには常勝軍団にならないと。だから数字に厳しく言うし、数字が上がる施策に突っ込みます。別なこともやりたいと思いながら、いまの立場でそれは捨てています。客観視をすると、実は好きなことがあまりできないです。

植野:CxOのジレンマですね。

藤原:現場には「どれだけしくじってもいい」と伝えて何も教えません。当たるときもあるじゃないですか。当たってほしいと願いつつ、失敗したときのフォローをあらかじめ考えます。そんな複眼的な思考を備えた「空間把握能力」がCxOには必要です。

植野:名サッカープレイヤーのようにね。

藤原:毎回の会議でも思いますが、「いま何をすべきか」という話と、「未来にどうするか」という話を「同時に」できる人が、ほぼいないので。

植野:この連載では、時間軸の話は必ず出てきます。いわば「時空間」の把握能力ですね。


「問題を解こうと深淵をを探りにいくうち、どんどん視座を上げていった藤原さん。そうしてCxoになった」

才能があっても失速する人の特徴


植野:出前館のCOOで苦労したことは?

藤原:ずっと中村会長(※1)が最前線でやられていたのでトップダウンの組織でした。縦割りの難しい部分は、隣の部署と連携がもてないこと。それに会長は厳しい経営者なので、良いも悪いもハッキリ伝えられるから、みんな報告すべき内容を伝えずについ嘘をついてしまう。

※1 中村利江(なかむら・りえ)1964年生まれ。日本最大級の宅配ポータルサイト「出前館」エグゼクティブアドバイザー。リクルート、ハークスレイ(ほっかほっか亭本部)などを経て、2002年に夢の街創造委員会(現・出前館)代表取締役社長。06年に大証ヘラクレス(現・ジャスダック)上場。その後、カルチュア・コンビニエンス・クラブやオプトなど複数の上場企業の取締役を経験。12年、出前館社長に復帰。20年、LINEから300億円の出資を受け資本業務提携を強化。

植野:萎縮しちゃって。

藤原:だから、最初のころは「どちらかというと成功よりも失敗したことを説明してほしい」と呼びかけ続けるのが大変でした。

植野:企業文化を変えましょうと。
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文=神吉弘邦 写真=高橋マナミ

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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