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2021.09.23

サラリーマンからビジネスマンへ。経営者の視点を養う「教科書」

経営の教科書 社長が押さえておくべき30の基礎科目

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、セゾン投信代表取締役社長COOの園部鷹博が「経営の教科書 社長が押さえておくべき30の基礎科目」を紹介する。


いい会社とは、いったいどんな会社なのでしょうか。

私がさわかみ投信で学んだのは、「自分が経営者になったつもりで会社を調べる」と、その会社の本質が見えてくるということ。その経営者の視点を養うために、「教科書」になってくれたのが本書です。

著者の新将命は、シェル石油をはじめ日本コカ・コーラなどで長年、社長を務めた経営者であり、本書には、その経験から導き出した、組織を率いる誰しもが肝に銘じておくべき原理原則が、コンパクトに集約されています。

そのなかで、新氏が最も大切にしているのは、「理念・ビジョン」です。「理念・ビジョン」と聞くと、当たり前だと思う方、きれいごとだと感じる方もいるでしょう。しかし、日本企業の97%がそのビジョンを活用できておらず、宝の持ち腐れで終わっているのです。

新卒で勤めたP&Gでは、上司から、「理念のない会社は目先の売り上げや利益があったとしても長続きしない」と、常に聞かされていましたが、P&Gが世界最大の消費財メーカーとして世界で勝ち続けているのは、社員一人ひとりがそのことを理解しているからなのでしょう。

さて、私が社長を務めるセゾン投信は、一人ひとりのお客さまの資産を成長させるため、“ホンモノ”の長期投資をお手伝いする会社です。創業から15年たったいまでも、その経営理念は変わることなく、社員はもとより、お客さまにもその思いが浸透しているという意味では、珍しい企業なのかもしれません。

しかし、「お客さま全部主義」を貫く当社にも、足りないところはあります。それは、社内のコミュニケーションです。その人の成長を考えるのであれば、その瞬間はつらくても、言ってあげることが優しさだと、私は思います。なんでも本音で語り合うことで強い信頼関係が構築され、その先にいるお客さまのお役に立てるようになるはずです。

新氏は、「サラリーマンになるな」とも言います。決められた時間働き、決められたことだけをやるのではなく、常に何らかの付加価値を提供しようと、新たな試みをし、同時に、いままでやってきたことを見つめ直してレベルアップしていく─これが、ビジネスマンです。

私は、まだ若い企業であるセゾン投信に、これまで学んできたものを伝え、仲間とともに当社の新しい歴史を積み重ねていきたいと思っています。

コロナの影響も長引き、当社と同じような課題を抱える企業は多いはずです。本書は、読むときの立場や自分がおかれた環境などによって、全く違う結論に導いてくれます。これからもことあるごとに読む、大切にしたい一冊です。

title / 経営の教科書 社長が押さえておくべき30の基礎科目
author / 新 将命
data / ダイヤモンド社 1760円 288ページ


あたらし・まさみ◎1936年、東京都生まれ。早稲田大学卒。シェル石油、日本コカ・コーラを経て、ジョンソン・エンド・ジョンソン、日本フィリップス(現・フィリップス・ジャパン)などで社長職や副社長職を歴任。住友商事のアドバイザリー・ボード・メンバーを務めたほか、多くの国内外企業のアドバイザーや経営者のメンターを務める。

そのべ・たかひろ◎1975年、兵庫県生まれ。神戸大学卒。P&G、さわかみ投信などを経て、2013年にドイチェ・アセット・マネジメントに入社。同社、クライアントサービス部ヴァイスプレジデント、大阪営業所長を歴任。18年にセゾン投信に入社し、20年より現職。

構成=内田まさみ

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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