NYのブルックリンを拠点に
Near Spaceは、2016年に設立され、BMWグループ傘下のMINIと投資会社Urban Usが立ち上げたニューヨーク本拠のアクセラレータ「Urban-X」に参加した。そして、2018年6月に、元フェイスブック幹部のAlison Rosenthalが設立したベンチャーキャピタルLeadoutやWireframe Venturesなどから200万ドルを調達した。
同社は昨年、150万ドルを追加で調達し、マテヴォシャンはフォーブスの「30 UNDER 30」に選出された。
Near Spaceは、2020年7月に本格的な商用展開を開始したが、パンデミックの影響を受け、ビジネスはやや停滞した。マテヴォシャンは、先端テクノロジーやハードウェアのスタートアップが集積するブルックリン・ネイビー・ヤードを拠点としているが、共同創業者やハードウェアの研究開発を担当するチームの大半はバルセロナの事務所に勤務している。
Near Spaceは、Swiftyプラットフォームを契約ベースで打ち上げるほかにも、自社の発射場から定期的な打ち上げを実施して地理空間データを更新するなど、複数のビジネスモデルを展開している。
新たなリードインベスターであるCrosslink Capitalは、地理空間業界への投資経験が豊富で、ArturoやDescartes Labs、Enviewにも出資している。同社のパートナーであるPhil Boyerは、従来より安価に成層圏でデータを収集するNear Spaceの手法を高く評価しているという。
Boyerによると、このようなデータの市場は大きく、特に大きな需要が見込めるのは、不動産や災害復旧、自動運転車などの業界だという。自動運転車の開発に注力するトヨタのVC部門であるトヨタ・ベンチャーズがNear Spaceに出資したのも頷ける。
「ロケット全盛期の今、気球企業に出資したと言うと怪訝な顔をする人もいるが、我々にとっては無謀な賭けではなかった」とBoyerは話す。
マテヴォシャンによると、プレーヤーが多いほど業界が活性化されるため、Near Spaceは衛星やロケットを手掛けるライバル企業を応援しているという。「気球を用いる手法に懐疑的な人も、我々のデータを見ると皆納得してくれる」と彼女は語った。