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国際基準のエグゼクティブ・プレゼンス最前線


Met Galaでは、多くのセレブリティが自ら着用するドレスを手掛けたデザイナーと登場するが、AOCも「TAX THE RICH」をデザインしたガーナ系カナダ人の黒人デザイナー、オーロラ・ジェームズと来場した。

ジェームズは「Brother Veilles」の創設者兼クリエイティブ・ディレクターであり、黒人ブランドを支援する非営利団体「15パーセント・プレッジ」の創設者でもあり、「議員(AOC)がMet Galaに出席するのであれば、メッセージを持って来る方がいいと思う」とコメントしていた。

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AOCとともに出席したオーロラ・ジェームズ(右)/ Getty Images

AOCはMet Galaでのインタビューで、メッセージとして「TAX THE RICH」を選んだ理由を、「『ワーキングファミリーの支援』や『公平な税制』については、ワーキングクラスやミドルクラスの人々の間で、つまり上院のフロアで行われています。今こそ、すべての層を会話に巻き込むべきだと思います」と答えている。ドレスにはそうした彼女の思想を反映した。

そして、自分のことをよくわかっているAOCは、ハリウッドのスターや裕福なセレブ達が多く集まるMet Galaの場をうまく利用した。自分が動こうか動くまいが、他人に必ず何かを言われ、問題視される。何もせずとも何らか言われるのであれば、自分に与えられた権利をフルに活用し、伝達したいメッセージを堂々と発信する、その一択だったと見える。

しかも2年半ぶりのMet Galaであれば、メディアの取材も殺到し、大きなニュースとして取り上げられる。メッセージ性の強いドレスを着ているだけで、皆の目を引き、「何?何?」と聞いてもらえる。自分から大声をあげて「聞いてください!」という必要がなく、話は早いのだ。

戦略的にメッセージを発信するリーダー


今回のAOCについても、世間では様々な意見があった。ただ筆者は、「出席する権利を得たのであれば、メッセージを携えて堂々と登場する」という彼女の姿勢を評価したい。

「どうせ何か言われるなら、自分のやるべきことをやる」。そして「どうせやるなら戦略的かつ効果的に行う」ことは、彼女のようなリーダーにとっては重要な姿勢だ。大きく批判されれば、それはそれで注目された証拠であり、好都合とする。そういうことだろう。

Met Galaはあくまで「ファッションの饗宴」。ファッションという非言語を使い、ファッショナブルかつ大きなインパクトを与えるメッセージの伝え方をすることがポイントになる。ただスローガンを真正面から掲げたスタイルでは、ただの仮装になってしまい、正当なクリティークの土俵にさえ上がれないわけだ。

「ファッションは政治」というが、今回AOCはまさにそれを上手く使ったのである。

世の中の批判をものともしない“フェアレス・ガール(恐れを知らぬ少女)”のようなAOCだが、Met Galaでは"見返り美人”のように振り返るポーズではにかんでいた。それは、このドレスと彼女がシンクロしていたからだろうか。

文=日野江都子

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