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2021.09.21

21年上半期は150億ドル、加熱する「宇宙投資」とVCマネーの行方

(c) SpaceX

リチャード・ブランソンの「ヴァージン・ギャラクティック」や、ジェフ・ベゾスの「ブルー・オリジン」、そしてイーロン・マスクの「スペースX」らが相次いで有人宇宙飛行を成功させたことで、宇宙の商業化が当初の予測よりも早く実現するとの期待が高まっている。

その結果、ベンチャーキャピタル業界では、この分野への投資意欲がこれまで以上に熱を帯びている。

スペースXやロケットラボのような先駆者たちがもたらした最大の進歩は、ロケットの打ち上げの低コスト化だ。その結果、彼らに続く企業が続々と生まれている。

例えば、ロングビーチに拠点を置くRelativity Spaceは、巨大な3Dプリンターでロケットを製造することで、コストを引き下げようとしている。シアトルのSTOKE Space Technologiesは、スペースXのようにロケットの第1段部分のみを再利用可能にするのではなく、2段目も再利用可能にして、完全に再利用可能なロケットの製造を目指している。

1990年代のドットコムブームの背景には、コンピュータの普及と光ファイバネットワークの大規模な整備があったが、投資家は宇宙エコノミーにおいても同じ流れが起きると予測している。

Space Capitalのデータによると、2021年上半期に宇宙セクターでは合計230件のディールに約150億ドル(約1兆6500億円)が注がれており、2013年以降の累計調達額は370億ドルに達している。さらに、SPAC(特別買収目的会社)を活用したエグジットの増加が、投資熱に拍車をかけている。

STOKE社の共同創業者のアンディ・ラプサ(Andy Lapsa)は、「現在は宇宙のエコシステムのルネッサンス期だ。今ほど宇宙分野の投資機会が有望視されている時代は無かった」と語る。ファウンダーズ・ファンドの投資主任を務めるデリアン・アスパロホフ(Delian Asparouhov)も彼と同意見だ。

「私たちは今、スペース2.0の始まりに立っている。投資家たちは、宇宙をマネタイズするための新たな機会を探している」と、アスパロホフは語る。

サービスとしての微小重力


アスパロホフは投資家であると同時に、宇宙関連のスタートアップの共同創業者として、この分野のポテンシャルに魅了されている。彼が共同創業したサンフランシスコ本拠の宇宙開発企業Varda(バルダ)は、7月のシリーズAラウンドで4200万ドルを調達し、ロケットラボに3回の打ち上げを依頼した。

Vardaは、「サービスとしての微小重力(microgravity as a service)」の実現を目指す企業で、軌道上に設置した宇宙工場で、バイオプリントした臓器や特殊な半導体など、微小な重力下でしか実現できないプロダクトの製造環境を構築し、外部の企業に提供する。
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編集=上田裕資

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