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朝日新聞外交専門記者


同じことは、最近、北朝鮮が発射した長距離巡航ミサイルにも当てはまる。北朝鮮が、日本のほぼ全域が入る「1500キロを飛行した」と発表したことから、日本メディアのなかで「日本が危ない」という声が渦巻いた。

だが、別の元自衛隊幹部は「あれは、どうみても韓国の施設を狙った兵器でしょう」と語る。巡航ミサイルは事前に飛行経路の地形を入力したうえで、GPAを使って位置を補正しながら飛行する。スカッドミサイルなどの半数必中界(CEP)が近年、劇的に向上したことから、北朝鮮は、米国か中国のGPSサービスを利用しているとみられている。ただ、北朝鮮のレーダーは地上設備くらいしかなく、水平線のかなたにある日本の目標を捉えることはできない。自前の衛星もないので、電波が届かない日本近辺でミサイルを操縦することもできない。北朝鮮が、都市建設が活発な日本の地理情報をリアルタイムで把握しているとは考えにくい。艦船のような動く標的はもちろん狙えないし、都市の間を縫うように飛行するのも難しい。そもそも、旅客機程度の速度だから、空対空ミサイルなどで撃墜できる。元幹部は「1500キロの意味は、敵の攻撃を受けにくい中朝国境地域から発射して、地理情報に明るい韓国の標的を狙うという意味でしょう」と語る。

どこの国も当たり前だが、自分の国が主人公だという錯覚に陥りやすい。欧米諸国が大西洋を、日中韓などが太平洋を中心にした世界地図を、それぞれ使っているのが良い例だ。先の知人は「お陰で、欧米の人間は地図の端っこになる南太平洋諸国の位置をうまくイメージできないみたいだ」と語る。韓国も近年の国際会議で、インド太平洋の問題を議論する各国を尻目に、北朝鮮問題ばかり取り上げて失笑を買っている。

日本もエズラ・ボーゲルが著した『Japan as Number One』が大いに引用された1990年代まではともかく、今の時代に至っても、日本中心主義では世界から取り残されることになりはしないか。

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文=牧野愛博

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