PwC Japanグループ主催グローバル
メガトレンドフォーラム
2021
COVID-19がグローバルシステムの課題を浮き彫りにする中、
成功の再定義と、そこを目指して行動を起こすことがあらゆる企業に求められている。
この難題を乗り越える具体的な施策を議論するべく、
PwCJapanグループは産官学のキーパーソンを招いたフォーラムを開催した。
メガトレンドととるべきアクションを俯瞰できるレポートをお伝えする。
コロナ禍はさまざまな課題を浮き彫りにし、不確実性の高まりを顕在化させた。「従来と同じアプローチではうまくいかない」と感じているビジネスリーダーは多いだろう。
予測不可能な時代に突入したいま、成功への道筋を見通すのは決して簡単ではない。ビジネスリーダーがそれぞれのフィールドにおいて、新たな未来を的確に描き、実現させるにはどうしたらいいのか。そのインサイトを提示していたのが、2021年7月に2日間にわたって開催された「グローバル メガトレンド フォーラム 2021」(主催:PwC Japanグループ)である。
このフォーラムの6つのセッションの展開は、そのままビジネスリーダーにとってのフレームワークとして参考にできる。世界が直面する「現状」の分析から目指すべき「成功」を再定義する手法、ESGやイノベーションといった重要課題に対する具体的かつ実践的なアプローチまで、自らのフィールドに照らし合わせながら見つけ出せる構成となっている。
セッションには、それぞれ産官学のキーパーソンが登壇。ビジネスリーダーが直面する課題とその解決策をさまざまな角度から語り合った。
(写真左より、AllTurtles/mmhmm フィル・リービン、慶應義塾大学 宮田 裕章、東京大学 馬田 隆明、マザーハウス 山口 絵理子)
国内外から登壇したパネリストの顔ぶれにも注目したい。シリコンバレーを代表する連続起業家であるフィル・リービン、データサイエンスの専門家であり科学を駆使した社会変革を研究する慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章、東京大学FoundXのディレクターとしてスタートアップ支援に従事する馬田隆明、途上国から世界に通用するブランドを発信することをめざすマザーハウス代表の山口絵理子など、各分野の最前線で活躍する産官学のキーパーソンが、それぞれの視点から密度の高い議論を行った。
なお、これらのセッションの詳細な内容については、PwC Japanグループのオウンドメディア「Value Navigator」でレポートが公開されている。本稿ではそれぞれの見どころを紹介していくので、各記事をチェックする際の参考にしていただきたい。
Report 1加速する変化と迫るタイムリミット
企業は成功を再定義し、今すぐ行動を
「成功を再定義する」をテーマにした1日目。キーノートセッションは、PwC Japanグループ代表の木村浩一郎がモデレーターを務めた。パネリストとしてPwCグローバルリーダーのブレア・シェパードと、東京大学産学協創推進本部でスタートアップ支援を行う馬田隆明が参加。
ブレア・シェパードは、COVID-19の拡大でグローバルシステムの限界が明らかになったとして、世界が「繁栄」「テクノロジー」「制度的正当性」「リーダーシップ」の4つの危機を迎えていると指摘。しかも、各国政府は対応の準備ができておらず、企業こそ変化の担い手になれると期待を寄せた。
東京大学の馬田隆明は、その期待に応えられるのは「優れた社会的インパクトを明確に示す企業」として、ESG投資がその典型だと説明する。そうした企業には資金のみならず人材、顧客、パートナーも集まってくる時代が到来しているとした。
では、自社の社会的インパクトをどう示し、どのように行動すべきなのか。三者の議論は、それらを導き出すために必要な視点を浮き彫りにしていった。
Speakers
PwC Japanグループ代表
木村 浩一郎東京大学 産学協創推進本部
FoundX ディレクター
馬田 隆明氏PwC Global Leader,
Strategy and Leadership Development
ブレア・シェパード
Report 2アカウンタビリティの発揮が
サステナビリティガバナンス実践の条件
環境問題や社会課題への取り組みは、今後の企業に不可欠だ。ESG投資の台頭からわかるように、既存のガバナンスでは対応に限界がある。2021年6月に適用が開始された改訂コーポレートガバナンス・コードで、サステナビリティへの積極的・能動的な対応を求める規定が盛り込まれたことも受け、このセッションでは、サステナビリティの観点を経営戦略とガバナンスにどう取り込むかの議論が展開された。
パネリストは味の素代表執行役社長の西井孝明、キリンホールディングス常務執行役員の溝内良輔、りそなアセットマネジメント執行役員責任投資部長の松原稔、PwC税理士法人代表の高島淳。モデレーターはPwCあらた有限責任監査法人代表執行役の井野貴章が務めた。
りそなアセットマネジメントの松原から、機関投資家がどんな観点で企業に投資をしているか語られるのも注目だが、味の素社長の西井が「サステナビリティを企業戦略のど真ん中に置いて、短期的な収益も上げていく」とし、その具体的な道筋まで明かしているのも見逃せない。また、PwC税理士法人の高島は、アフターコロナを視野に入れて各国政府が財源確保に舵を切り始めると分析し、税務執行の厳格化や訴訟リスクを勘案する必要性があると警鐘を鳴らしている。
Report 3「独占」から「持ち寄り」へ
社会的利益としてのイノベーション
1日目の最後は、産官学それぞれの分野での取り組みに触れながら、これからの社会に必要なイノベーションのあるべき形を模索したスペシャルセッション。パネリストは内閣官房IT総合戦略室参事官(イベント開催当時。現デジタル庁参事官)の奥田直彦、スマート農業を推進するJA西三河きゅうり部会改革プロジェクトサブリーダーの下村堅二、慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章、地域において“健康的なまちづくり”に携わる医療人材「コミュニティナース」育成に取り組むCommunity Nurse Company代表取締役の矢田明子、PwCあらた有限責任監査法人執行役副代表として監査のDXを推進する久保田正崇の5名。PwCコンサルティング代表執行役 CEOの大竹伸明がモデレーターを務めた。
注目は「脱・一子相伝」が議論のキーワードとなった点だ。情報やナレッジを囲い込み暗黙知化してきたことを、データとして形式知化し共有する重要性が各パネリストから語られた。当然のことながら、改革のプロセスでは組織や地域コミュニティのマインドセットを変える必要も生じる。5名のパネリストがそれぞれの領域でいかに困難を克服し、成果を挙げていったのかはぜひセッションレポートで確かめてほしい。
Report 4「社会・環境価値」「経済価値」の
トレードオンで
サステナビリティへの扉を開く
2日目のテーマは「行動を起こす」。まずは、サステナビリティを経営の中心課題ととらえ、事業ポートフォリオやビジネスモデルを見直してサプライチェーン全体でビジネスを再創造する「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」について議論を展開した。
パネリストは、アムンディ・ジャパン チーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサーの岩永泰典、DSM代表取締役社長の丸山和則、リアルテックファンドの代表でユーグレナCOOの永田暁彦、PwC Japanグループ グループマネージングパートナーの鹿島章の4名。モデレーターはPwC Japanグループ ストラテジーリーダーの山岸哲也が務めた。
従来、CSR(企業の社会的責任)は利益の一部を使って取り組むものだったが、いまや「経済・環境・社会」の3つの価値は同時に目指すものとなってきた。つまり、サステナビリティはチャリティではなく「事業を通じた社会貢献」になっているのだ。パネリストの発言から浮かび上がるのは、「パーパスとストーリーの共有がカギ」ということ。リアルテックファンド/ユーグレナの永井が「サステナビリティは経営のさまざまなところに効いてきます」と発言した理由にも着目したい。
Report 5分断や二極化で高まるビジネスリスク
危機を乗り越えるレジリエントな経営とは
さまざまな地政学リスクによって、グローバル化の潮流は新たな局面を迎えている。加えて、コロナ禍によって「分断」と「二極化」はさらに加速しており、従来の経営手法が通用しなくなってきたことは明らかだ。
そこで、現在のビジネス環境を官民それぞれの視点から見据え、今後求められる経営姿勢を論じ合ったのがこのセッション。パネリストは日本企業の海外展開支援などを担当する経済産業省貿易経済協力局戦略輸出交渉官の平塚敦之と武田薬品工業 ジャパン ファーマ ビジネス ユニット プレジデントの古田未来乃、PwC Japanグループ グループマネージングパートナーの出澤尚。PwC JapanグループグローバルJBNリーダーの足立晋がファシリテーターを務めた。
「分断」と「二極化」に対応するには、グローバルとローカルの双方にこれまで以上に目配りをしなくてはならない。グローバルなガバナンスとローカルへの権限移譲を意識したマネジメントを実践する武田薬品工業の古田は、「ローカル市場ごとの最適化が、結果としてグローバルでの成長につながる」と言及。各市場でのリスクに対応できるよう企業経営にレジリエンスを埋め込む重要性を指摘した。
経営にレジリエンスを埋め込むには、行動の核となるパーパスやミッションの見直しが欠かせない。その際にどのような視点が求められるのか。収益と社会貢献を両立させるために必要なプロセスについても深く掘り下げていくセッションとなった。
Report 6行動が世界を変える
変化を起こす起業家の経験に学ぶ
的確な現状分析をもとに目指すべき未来を見定め、パーパスやストーリーを共有してリスクに備えたとしても、実際に「変わる」のは簡単ではない。「変える」のに必要なマインドやアクションは何か。
シリコンバレーを代表する連続起業家の1人でAll Turtles/mmhmm共同創業者・CEOのフィル・リービンと、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念の実現を目指すマザーハウス代表取締役の山口絵理子、PwC Japanグループマーケットリーダーの森下幸典をパネリストに、PwCアドバイザリー合同会社代表執行役の吉田あかねがモデレーターを務め、変化を起こす行動について議論した。とりわけ、リービンと山口が自らの経験をもとに語ったチームビルディングの要諦は、ビジネスリーダーなら参考になることうけあいだ。
真にレジリエントな企業・社会を実現するために
長年、世界を支配してきた利益至上主義は終焉を迎え、「経済・環境・社会の3つの価値」を同時に追求することが求められるようになった。予測不可能な時代においては、変化への対応力も不可欠だ。
PwC Japanグループ代表の木村浩一郎は、キーノートセッションで「いま求められるのは、一見相反するようなことを兼ね備えた上で戦略から実行までをやり遂げる高度なリーダーシップ」と表現したが、その領域に達するビジネスリーダーとなってこそ、SXが可能になるのだろう。そして、そこに社内外の多様なステークホルダーを巻き込むことで、真にレジリエントな企業や社会が実現できるのではないか。
Promoted by PwC Japan Text by 高橋秀和