10年ぶりに蘇ったトヨタ・アクア 激戦の小型クラスに勝負を挑む


バッテリーのパワーが増えたということは、従来よりエンジンが働かないで済む時間が多くなった。エンジンがかかってからも回転数を低く抑えられるので、ハイブリッド走行時の静粛性と上質感も向上している。正直言って、あまりにも静かだから、ワンサイズ上のクラスに乗っている感じがする。CVTとの組み合わせもあるので、急加速する際には当然エンジン音が高まるけど、嫌な音ではないし、振動も少ない。

今、急加速に触れたけど、新アクアは小型車にしてはとにかく速い。アクセルを深く踏むと、納得できる加速が得られるし、低回転のトルクの太さにも驚く。従来より1.5倍ほど速くなっているけど、燃費も33.6km/Lになり、従来より多少向上している。しかし、リアルワールドでは25km/Lあたりが妥当ではないか。

新アクアのハイライトのひとつが「快感ペダル」だ。「日産ノート」などで使われている「eペダル」というワンペダル操作を、トヨタとして初めて取り入れている。あまりピンとこない曖昧なネーミングだし、「快感ペダル」というボタンもない。説明書を読んでみたら、やっとわかった。シフトセレクターの左側に「DRIVE MODE」ボタンを見つけ、「POWER+」というモードを選ぶ。

アクアの運転席

POWER+はスポーティーな走りをするモードなので、アクセルレスポンスがよりシャープになり加速が力強くなる。アクセルを離すと、確かに減速はするものの、日産ノートみたいな強い減速Gは感じなかった。少し慣れが必要な機能だけど、数十分したら、ワンペダルで割とスムーズに運転できるようになる。でも、頭に入れておかなければならないのは、完全に停止することはないので、自分でブレーキを踏む必要がある。

TNGAのプラットフォームとスイングバルブのショックアブソーバーが基本設計になっており、接着剤の多用によってボディー剛性を高めているので、道路からの衝撃を上手く吸収してくれ、従来よりキビキビした走りになっている。また、ステアリングも遊びがなく正確に反応するし、乗り心地もワンランク上な感じに達している。

インテリアでも磨きがかかっている。大型10.5インチのセンターモニターは主役だけど、周りのスイッチ類はシックで使いやすい。フルデジタルのドライバー前のメーターも読みやすいし、シートの2トーンのデザインも新鮮。10.5インチのモニターに映るメニュー画面の「MAP」と印字されたスイッチを押してもナビ画面は出ない。

インパネの写真

自分の携帯を「ケーブルで繋ぐか、ディーラーオプションのナビキットを付けるか」と知った時は、「あ、ここでコスト削減をしているんだな」と思った。もう1つ不思議だったのが、指で引っ張るような電子パーキングブレーキではなく、足で踏むフットブレーキが付いていること。ここもコスト削減だね。

ただ僕としては、いくら室内の質感やデザインが良くなったと褒めはしても、エモーションを感じない。トヨタさま、大変申し訳ないけど、今度は内装のデザインにアクセントとして、はっきりした明るい色を加えてくれないかな。そうすることによって、クルマが明るくなって、より若返えるし、より多くのユーザーにアピールできるのではないだろうか。

車両本体価格は240万円で、フルにオプションをつけると、282万円ぐらいになる。それに税金を足すと、約300万円になる。オプション付きの2WDの日産ノートの320万円と比べると、アクアの商品力のよさを感じる。決め手は外観デザインになるかもしれないね。



国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
「ライオンのひと吠え」過去記事はこちら

文=ピーターライオン

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