だが、AIは簡単に導入できるものではない。一流の企業でさえ、課題や失敗に直面している。
では、どうすればいいのか? 戦略のひとつは、従業員にAI教育を施すことだ。
「AIの知識を持つ人が増え、プロセスに参加し関与するようになれば、組織内の大小の問題に取り組みやすくなります」と語るのは、アルテリックス(Alteryx)の製品マーケティング担当シニアディレクターを務めるデイビッド・スウィーナー(David Sweenor)だ。「当社ではこれを『AIと解析の民主化』と呼んでいます。100人、1000人、5000人のチームが、それぞれの専門分野でさまざまな問題に取り組めば、少数の人の手に委ねるよりも、まちがいなく大きな効果があるでしょう」
リーバイ・ストラウスの例を見てみよう。同社は2020年、あらゆる役職のあらゆる従業員を対象に、ビジネスアプリケーションに関するデータとAIに的を絞った網羅的な企業トレーニングプログラムを導入した。たとえば、「機械学習ブートキャンプ」。これは、Pythonのコーディング、ニューラルネットワーク、機械学習を学ぶ8週間のプログラムで、現実的なシナリオに重点が置かれている。
「当社の目標は、このスキルセットを誰もが使えるものにし、データサイエンティストや機械学習の実務者を組織全体に定着させることにあります」とリーバイ・ストラウスのデータ・解析・AI担当グローバルヘッドのルイス・デセサーリ(Louis DeCesari)は言う。「世界最高のデジタル・アパレル企業になるという当社のビジョンを実現するためには、会社のあらゆる領域にデジタルを組み込む必要があります」
確かにそのとおりだが、企業トレーニングプログラムは無駄づかいになりやすい。経営上層部の理解が十分でない場合には、なおさらだ。
また、トレーニングプログラムを、単なる講義の集まり以上のものにすることも重要だ。「必要なのは、成果ベースのトレーニングです」と語るのは、コンサルティング会社ブーズ・アレン・ハミルトンのAI戦略担当ディレクターを務めるキャスリーン・フェザリンガム(Kathleen Featheringham)だ。「AIのことを学ぶだけのトレーニングではなく、組織のミッションを前進させるためにAIをどのように利用できるかに重点を置くこと。また、役割ベースのトレーニングにする必要もあります。どんなケースでもうまくいく万能のトレーニングアプローチはありません。組織内のさまざまな役割によって、トレーニングのニーズは異なります」