ちなみにキッチンカー立ち上げにあたっての資金調達のため、銀行に提出した「創業計画書」に、美咲氏がBeChefを利用し、単独でゴーストキッチンをやっていたことに含められたことも、プラスになったという。
「2人の、食の分野での履歴はもちろん書いたのですが、銀行側から『奥様は独立して事業をされたご経験はありますか』という質問もあったので」と友哉氏。
融資金額のゼロの数を見たとき「腹が決まった」
友哉氏は以下のようにも話す。
「妻がBeChefを利用していた5カ月、僕は飲食店に勤務していましたが、その間は、コロナ禍下で客足が遠のくことを互いに実感しつつ、切磋琢磨し合いながらこれからのことを話し合えた重要な時期でした。互いに仕事を終えてからの夜、たとえば家ではこんな会話を交わしていました。
『今日からうちのレストランもテイクアウト販売始めたよ』『やっぱりお客さんはなかなか入らない?』『なかなか厳しいね』『レストランでもテイクアウト始めるところ増えたもんね』『お家でもレストランの料理を楽しんでもらえて、少しでもお客さんの気分転換になればうれしいね』『──そうだね!』。
僕が得意なのはソーセージやハムなどの食肉加工品、『シャルキュトリー』なのですが、キッチンカーではどうしても製作に制約があります。ですので、今はやれる範囲で、メニューを開発しつつ、季節に応じてバリエーションを広げていきたい」
美咲氏は、「インスタグラムなどで拡散努力も自分でしましたが、BeChef代表の戸邊さんがテレビ局の人とつなげてくれて関西圏の夕方のニュースに取り上げてもらったのが大きかったです。大阪などの遠方から、わざわざ『il pleut』の焼き菓子を買いに来てくださる方も出てきました」と話す。
では、これから食領域で起業を考える人に伝えたいことはなんだろうか。友哉氏は言う。
「一言、『事業を存続していく覚悟』ではないでしょうか。BeChefはなにしろ初期投資が必要なく、ありがたかった。次なるステップとしてのキッチンカーも、実店舗よりは失敗した場合のリスクヘッジの点で楽ですが、それでも資金繰りは大変です。
キッチンカー立ち上げに際して当然、銀行の融資を受けましたが、金額を見たときに腹が決まったというか、まあ、『覚悟がすべてだな』と感じました。後は、妻のBeChef時代の関西テレビの件などメディアの協力もありましたし、育ててくれた料理業界の師匠の教えも大きい。その時々にお世話になる人たちとの縁を長く大切にすることも、心がけて行くべきと思います」
美咲氏は言う。
「BeChefを利用してみて感じたのは、すべて備品や環境が整っていましたし、イートインのサービスにはBeChef側からのサポートもあったのに、それでもとにかく1人でやるには、業務がとても多い、ということでした。
その経験を経て、夫という最強の相方と開業できるという憧れや夢が叶いそうなのは本当に幸せです。独立するにあたって、夫婦でなくてもいいと思いますが、心から信頼できる人が1人は必要だと思います」