企業トップは米政権のコロナ対策を支持、背景に潜在的な危機も

グーグルの最高経営責任者であるサンダー・ピチャイ(Getty Images)


最近になって、大企業が連邦政府に取り入る動きが顕著になっている。バイデン大統領と現政権の側についていれば、政府から好感を持って受け入れられるというメリットがある。そう考えると、大企業のCEOが直ちにバイデン大統領によるワクチン接種義務化の方針を支持したのも、それほど意外ではない。

ウォール街の金融機関など、従業員のオフィス勤務を再開させようと躍起になっているセクターは、今回の大統領の判断を歓迎するだろう。オフィス環境に身を置くことが危険だという意識は、働く人たちがオフィス勤務を拒否する理由の一つだ。また、自宅とオフィスを往復する通勤のあいだに、バスや鉄道の車内、街頭で日常的に人と接することも、懸念の要因となっている。

今回のパンデミックに関して、話題にのぼることは少ないが、ひとつの大きな問題がある。それは、もし従業員がオフィスに戻らなければ、ニューヨークのような大都市が大きな財政危機に見舞われる可能性があるということだ。

ニューヨークは、この街に本拠を置く、ウォール街の大手金融機関をはじめとする各種産業を主要な税収源としている。さらに、レストランやバー、ネイルサロン、ジム、小売店や各種店舗など、オフィスワーカーが利用してくれることを前提としている産業も、一大エコシステムを形成している。大勢の従業員がオフィスに復帰してくれなければ、彼らのビジネスの未来も絶望的だ。

こうした状況では、連鎖的な危機が発生するおそれがある。不動産オーナーは大損失をこうむるだろう。街を行き交う人たちの数が激減すれば、小規模事業者は店をたたむかもしれない。

そうなれば、市の財政を潤すはずだった税収も、真っ逆さまに急減する。税収が減れば、市当局は思い切った歳出削減に踏み切るほかなくなる。これが、警官や消防士、鉄道や公共交通機関の職員、教師、ごみ収集員などの公務員のレイオフを招く。博物館や、公費の援助を受けている文化的イベントも金銭的な後ろ盾を失う。

このような歳出削減やレイオフにより、街は荒廃し、危険度も増す。コロナ禍のさなかに目の当たりにしたように、犯罪や暴力行為の増加が報じられるだろう。犯罪件数についての記事を読んだり、テレビやオンラインで生々しい暴力行為の映像を見たりした人は、恐怖心を覚え、マンハッタンに戻ることをためらうだろう。そうなれば、容易に負のスパイラルが発生してしまう。従業員たちは、自身の身の安全に不安を抱き、ニューヨークの中心部に戻りたくないと言い出すだろう。それも無理のない話だ。

実業界のトップは賢い人たちであり、こうした事態が起きることを予測しているはずだ。ニューヨークでは大きな地位を占めるウォール街の金融機関が旗振り役となり、バンカーやブローカー、トレーダーに対し、オフィスに戻るよう促しているが、その背景にはこうした理由もあるのかもしれない。誰もが在宅勤務を続けた場合に起きうる最悪の事態を、彼らは見越しているのだ。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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