企業トップは米政権のコロナ対策を支持、背景に潜在的な危機も

グーグルの最高経営責任者であるサンダー・ピチャイ(Getty Images)

有名企業のトップが名を連ねる全米屈指の経済団体、ビジネス・ラウンドテーブルは9月9日、従業員数が100人を超える民間企業に対し、新型コロナワクチン接種、もしくは毎週の検査を義務付けるバイデン大統領の方針に支持を表明した。

ビジネス・ラウンドテーブルの会員には、名だたる最高経営責任者(CEO)が並ぶ。グーグルの親会社、アルファベットのCEOを務めるサンダー・ピチャイ、シティグループのジェーン・フレイザー、アマゾンのCEOに就任したばかりのアンディ・ジャシー、そしてアップルのティム・クックはみな、同団体のメンバーだ。

ビジネス・ラウンドテーブルは、バイデン大統領の方針に賛意を示す声明において以下のように述べている。「ビジネス・ラウンドテーブルは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いにおいて厳戒態勢を継続するバイデン政権の姿勢を歓迎する。米国実業界のリーダーたちは、このパンデミックに打ち勝つためには、ワクチン接種と検査が不可欠であることを理解している。それゆえに、多くの企業はリソースを投入し、顧客や従業員に対してワクチン接種を受けるよう促し、有給休暇を含む奨励策を実施している」

ビジネス・ラウンドテーブルの声明には、さらに以下のような記述がある。「この数週間で、多くの企業が従業員の一部、あるいはすべてに対して、ワクチン接種の義務付けに踏み切った。この判断を我々は歓迎する」「ビジネス・ラウンドテーブルは、現政権、およびあらゆるレベルの政府幹部と協力して、パンデミックに打ち勝つために積極的に取り組んでいく」

各企業のCEOや幹部が、バイデン大統領の大統領令を歓迎するのは、ビジネスの観点からは賢明な行動と捉えられる。ワクチン接種の義務化は、企業トップにとって朗報だ。今の世の中ではあらゆる物事が政治問題化しており、職場におけるワクチン接種もその例外ではない。

職場の人々は、日ごろソーシャルメディアで目にしているのと同様に、さまざまな問題によって2つの党派に分断されている。オフィスのワクチン反対派は、身体は自分のもので、雇用主がそこに何を注入するかを指図するなど許しがたいと主張する。逆にワクチン賛成派は、新型コロナウイルスへの感染や蔓延のおそれがあるとして、ワクチン未接種の人と一緒の職場で働くことを拒んでいる。

バイデン大統領のワクチン義務化方針により、経営陣は、職場を二分するこの難問に関わる必要がなくなった。ワクチン接種をめぐる議論において、賛成派と反対派の両方に配慮しようとして、従業員のかなりの部分の心情を無視するリスクを負うことはもはやない。中間管理職も、「自分は上司失格なのでは」と悩む必要はなく、すべてをバイデン大統領のせいにして「自分にどうこうできる問題ではない」と言えば済む。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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