欧州のGDPRから距離を置きたがる英国政府の「不毛な努力」

デジタル・文化・メディア・スポーツ省 オリバー・ダウデン長官(Leon Neal/Getty Images)

英国政府は、ブレグジット後のデータ保護体制の確立に向け、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)から距離を置くための協議を続けている。

その主な内容は、「常識に基づいた新しいシステムを提案する」というもので、政府は、新型コロナウイルスへの対応を例に挙げ、医療データの共有を簡素化し、中小企業のコンプライアンスの負担を軽減したいと述べている。

英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ省のオリバー・ダウデン長官は、「EUを離脱した今、私たちには世界をリードする新しいデータ体制を構築する自由がある。人々のデータを安全かつセキュアに保ちながら、英国全土に成長とイノベーションの新たな黄金時代を到来させる」と述べている。

英国政府は、世界的に有名な眼科病院であるMoorfields Eye Hospitalとロンドン大学ユニバーシティカレッジで、何千もの目のスキャンデータの解析にマシンラーニングが活用され、治療に活かされたことを成功事例に挙げている。

また、データ保護に関しては、小さな美容院が、巨大なハイテク企業と同じプロセスを踏む必要はないと述べている。

デイビッド・フロスト内閣府国務相は、「今回の改革は、英国がEU域外で新たな規制の自由を手に入れたことで、英国の企業と消費者の利益のために大胆な行動を取ることが可能になったことを示している」と話している。

しかし、デジタル権利擁護団体Open Rights Groupのディレクターを務めるJim Killockは、「政府は、人々のデータ保護をおろそかにし、規制当局の仕事をやりやすくしようとしている」と批判した。

新たな規制を生むための「不毛な努力」


この改革が実際にどのような結果をもたらすかは、まだ分からない。今回の政府の発表は、英国が米国、オーストラリア、韓国、シンガポールらとグローバル・データパートナーシップを約束した2週間後に行われた。これは前向きな動きのように見えるが、英国のデータ保護を米国のレベルに引き下げることは、GDPRの基準からは明らかに外れている。

「今回の提案には大胆な言葉が並んでいるが、具体的な詳細はほとんど示されてない。そもそも英国のデータ保護法は、40年ほど前の国際的な枠組みに基づいたものだ」と法律事務所Mishcon de Reyaのデータプラクティスの責任者のアダム・ローズは述べている。

「政府が熱心に奨励しているデータのイノベーションと経済成長は、すでに既存のフレームワークで可能になっている」と、彼は指摘した。

編集=上田裕資

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