セコイアも欧州での投資を強化
MurphyとMasonが培った経験は、ライトスピードの投資戦略に合致している。同社の創業パートナーたちは、数十億ドル規模のエグジットに成功してきた。一方で、若手パートナーでフォーブスの「ミダスリスト」に選出されたJeremy Liew、James Mi、Nicole Quinnは、スナップチャットをはじめ、女優のグウィネス・パルトローが立ち上げた「Goop」、瞑想アプリ「Calm」など、コンシューマ向けサービスを提供する急成長スタートアップへの投資を強みとしている。
「Murphyは優秀な投資家だ。彼は、優れた起業家に求められる資質を深く理解しており、投資先の創業者たちと信頼関係を構築することに長けている。Masonも欧州企業への投資に専念するため、英国からスイスに移り、他の企業にもアドバイスを行っている」とライトスピードのゼネラルパートナーであるNicole Quinnは述べている。
ライトスピードが2007年以降に欧州のスタートアップに投資した金額は5億ドルに及び、古着マーケットプレイスの「Vinted」やHRソフトウェア開発を手掛けるユニコーン企業「Personio」、食料品デリバリーの「Zapp」などに出資している。
「我々は、これまで新しい地域に参入する度に、投資額を2倍、3倍に増やす決断をしてきたが、欧州でも同じことをするつもりだ」とQuinnは話す。ライトスピードは、Quinnが勤務するカリフォルニア以外に、中国やイスラエル、インド、シンガポールに事務所を構えている。
ライトスピードのライバルで、同じくシリコンバレーの大手VCであるセコイア・キャピタルも英国と欧州での活動を強化している。メンローパーク本拠のセコイアは、2020年3月にアクセル・パートナーズ出身のLuciana Lixandruを採用し、新しい事務所をロンドンに開設した。
この1年で、シリコンバレーやウォールストリートの投資会社の多くが欧州に参入しており、欧州の投資家は脅威に感じている。彼らは、米国のVCのような華々しい経歴を持たず、出資先が米国やアジアに進出するのを支援するための国際的なコネクションもない。
「欧州には素晴らしいシードファンドがある。我々は、彼らを追い出そうとなどとは全く考えていない。むしろ、我々の方から歩み寄り、我々ならではの価値を提案することで参入を認めてもらいたいと考えている」とMurphyは語った。