それ、リアルでやるならどうする? 逆にサイトスペシフィック


東京都大田区にある人口島・京浜島で行われた「鉄工島フェス」もよい例だ。京浜島に民家はほぼ存在せず、工場が立ち並ぶ。フェスというとキャンプができるような野山で行う印象があるが、このフェスは工場地帯での開催だ。面白い発想の転換。工場の作業場の空間は、音響としての役割もバッチリ、かつライブステージとしても視覚的にかっこよく没入感がある。サイトスペシフィックな視点は、いつも新鮮な体験を連れてきてくれる。

サイトスペシフィックな思考実験


外出制限解除後には、打ち合わせにせよプレゼンにせよ、リアルで出席してもらうために、その場でしか体験できない何かを考えると楽しそうだ。いくつか思考実験をしてみる。

例えば、散歩打ち合わせ。会議室とは異なり、歩きながらであれば、アイデアがたくさん出るかもしれない。4人以上なら、まず2人ずつ散歩し、頭がほぐれたら公園の広めのテーブルで案をまとめる。

または、子ども向けの商品開発のとき。相手を自宅に招き、子どもがいるなかでプレゼンや打合せをしてみるなど、案件に関連した場所で行うと発想がどんどんふくらみそう。

さらに、大事な話は会議室や自室ではなく旅行先で、つまり大事な話をするために旅行を計画してみる。都内では移動のしやすさからいくらでも予定が入ってしまい、お互いに時間をたっぷり取ることが難しい。しかし旅行先なら強制的に話に集中でき、非日常で本心も語りやすい。

もちろん、今後も外出制限は続くだろうし、数年後に新たなウイルスが流行するかもしれない。そんなときにリモート慣れした私たちの経験は貴重だ。しかし、その半面またリアルで会えるようになったとき、何事もなかったように元には戻らないだろう。そのとき、リアルで会う意味とは何か? リアルだとどんな楽しいことがあるだろう? そんなことをいまのうちに考えながら、日々活動することをより楽しくアップデートできたらいいなと思う。


下浜臨太郎◎路上観察やニッチな文化好きが高じて、路上で見つけた看板をフォント化する「のらもじ発見プロジェクト」や、町工場を音楽レーベル化する「INDUSTRIAL JP」などの活動をしている。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジ ェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。

文=下浜臨太郎 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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