顔も隠す「全身黒」 キム・カーダシアンの衣装にネット騒然

キム・カーダシアン(Theo Wargo/Getty Images)

キム・カーダシアン(Theo Wargo/Getty Images)

米ニューヨークのメトロポリタン美術館で13日夜に開かれたファッションの祭典「メットガラ」では、キム・カーダシアンが頭から足先まで全身黒で包む服を着て登場し、話題をさらった。
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カーダシアンは数週間前、夫カニエ・ウエストの最新アルバム「ドンダ(Donda)」のリスニングパーティーに出席して以降、キャットウーマンやパフォーマンスアーティストのリー・バウリーを連想させる全身黒のバレンシアガのボディースーツ姿を見せ、話題を呼んでいた。この衣装は、最近レッドカーペットで見られた中でもおそらく最もアンチファッションなものだろう。

ツイッターでは、この衣装の意味について臆測が飛び交った。このファッションを『ハリー・ポッター』に登場するディメンター(吸魂鬼)になぞらえたり、死神や、『指輪物語』のナズグル(指輪の幽鬼)と比較したりする人もいた。これは過去の自分の“影”を象徴しているのではという意見や、替え玉がカーダシアンに成りすましているのではないかという臆測も飛び出した。


(Getty Images)
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しかし中でも特に突飛だったのは、この衣装がウエストの新作アルバム「ドンダ」を象徴しているという説だ。同作では、真っ黒な正方形がアルバムカバーに使われている。

この衣装はさまざまな意味で、ロシアの芸術家カジミール・マレーヴィチが1915年に描いた絵画「黒の正方形」のような抗議メッセージだとも考えらえる。この作品は「絵画のゼロ点」を示すものとされ、こうした幾何学的な図形のシンプルな美を追求する芸術運動シュプレマティズム(絶対主義)を始めたマレーヴィチには当時、反発が生まれた。

しかし「黒の正方形」は今や、現代美術における重要作品の一つであるとみなされている。マレーヴィチはこれを「解放された無の空虚さ」と呼んだ。

今年のメットガラのテーマは「アメリカンファッション」だった(ただし、バレンシアガはパリを拠点とするファッションブランドだ)。メトロポリタン美術館コスチュームインスティテュートのキュレーターによると、アメリカンファッションでは今、「ルネッサンス」が起きている。


ビリー・アイリッシュの衣装も話題を呼んだ(Kevin Mazur/MG21/Getty Images For The Met Museum/Vogue)


金色の鎧に包まれて登場したリル・ナズ・X(Mike Coppola/Getty Images)

カーダシアンの衣装は今年のメットガラで、他をすべて引き離し、最も人々の思考を刺激するものとなった。マレーヴィチの「芸術には正直さではなく、真実への要求がある」という言葉は、100年後の今でも通用するようだ。

編集=遠藤宗生

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