ビジネス

2021.09.30

コロナ禍がもたらした変革とペルノ・リカール・ジャパンのS&R戦略

ペルノ・リカール・ジャパン代表取締役社長 Nodjame FOUAD(ノジェム・フアド)


一方で、企業が果たすべき社会的責任、いわゆるS&R(サステナビリティ&レスポンシビリティ)戦略においてもめざましいアクションを起こしている。

「以前から、小・中学校を含む全国3万3000校の小・中学校へ未成年の飲酒防止を呼びかけるポスターを配布してきました。酒類というプロダクトを扱う以上、アルコールの過剰摂取や不適切な飲酒防止への取り組みは必須だと考えていたからです」


2019年にペルノ・リカール グループが策定したロードマップ。国連が提唱するSDGsに沿って、ワインやウイスキーの原材料が育つ土壌の保全という環境課題や、不適切な飲酒の根絶など、社会的課題から8項目の達成目標を定めている。

もともと、気候変動が懸念されるなかでワインやウイスキーの原料であるブドウや大麦が健やかに栽培されるための環境保護活動や、商品のパッケージから無駄を削減することでCO2削減に努めるサステナビリティ施策まで、ペルノ・リカールが目標とする社会的責任は多岐に渡っていた。それらに加えて、コロナ禍を機に今回新たにとったアクションとはすなわち、旗艦商品のひとつである「シーバスリーガル」の名において、新型コロナウイルス感染症研究に取り組む「国立国際医療研究センター」へ1000万円を贈るというドネーションであった。

「新型コロナウイルス感染症と最前線で闘ってくださっている日本の医療現場に対する感謝と敬意を表し、エッセンシャルワーカーへの支援が重要であると考えたためです。『シーバスリーガル』は現在100以上の国と地域で愛飲されるブレンデッドスコッチウイスキーですが、1909年のブランド創始以来、“Giving Back”という社会へ還元、貢献する精神を非常に大切にしてきました」

これらの活動は日本のみならず行われており、世界的には手指の消毒液不足への対処として400万リットルのアルコール提供や、100万リットル相当の手指のアルコール消毒液を最前線で働く医療従事者やその組織へ寄付。“Giving Back”の精神から生まれる感謝やリスペクトを具体的に表してきた。

「私たちの企業としてのミッションの根底にあるのは、Conviviality(コンヴィヴィアリティ)という言葉です。訳すなら人と人との心温まる交流という意味になるでしょうか。それぞれ独立した人同士が互いをリスペクトし、共生していく様をペルノ・リカール グループは大切にし、その時々の行動の指針としてきました。この2年ほどは、コロナ禍のためコンヴィヴィアリティな瞬間をあまり持てないのが残念ですが、これからはこれまで以上に人と人のつながりを大切にする風潮が生まれるのではと期待しています。

 
新型コロナウイルス感染症と闘う「国立国際医療研究センター」へ1000万円の寄付を行ったことにより、ペルノ・リカール・ジャパンは21年3月、「紺綬褒章」を日本政府より授与された。

日本では、お酒を楽しむというのが非常に社交的な活動ですが、アフターコロナの市場ではそれら社交的な機会も戻ってくるでしょう。パンデミックによって加速されたeコマースとともに継続的な成長を期待することができると考えています」

新型コロナウイルスは社会に壊滅的な影響を及ぼしはしたが、そこから学び、変革を起すきっかけをもたらしてくれた、とフアドCEOは語る。企業が果たすべき責任や社会貢献の在り方についても、新たな視点とスタンダードが生まれたのは、我々にとっても一歩の前進であるに違いない。


Nodjame FOUAD(ノジェム・フアド)◎ペルノ・リカール・ジャパン代表取締役社長。カナダの大学で政治学と、マネージメント&マーケティング学士を修めたのち、TBWAに入社。ペルノ・リカール グループには2008年、ジ・アブソルート・カンパニーのマーケティング・ディレクターとして入社。さまざまな役職を経て、2019年1月より現職。プライベートではふたりのこどもを育てる母でもある。

photographs by Kenta Yoshizawa / text and edit by Miyako Akiyama

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