特にワクチン忌避派に対し、「感染して重症化した場合、すでに満床で入院できない可能性があるだけでなく、この薬による治療も受けられないかもしれない」「この治療薬ばかりに頼ることはできない」と呼び掛けている。
米国ではワクチン接種率が低い州で感染者の急増に伴い、モノクローナル抗体薬の需要が大幅に増加。そのためこの薬は全米で、供給が不足している。ベシア知事は同日に公開したビデオメッセージと発表文の中で、感染拡大が続く新型コロナウイルスから身を守るための最良の方法は「ワクチン接種だ」と強調。次のように述べている。
「ワクチン接種をためらっているケンタッキー州民の中に、モノクローナル抗体薬を頼りにしている人がいることを懸念している」
「連邦政府は、今後この薬の不足が続くとの見通しを示している」
米紙ニューヨークタイムズアがまとめたデータによると、ケンタッキー州で接種を完了した人の割合は、約50%。少なくとも1回の接種を受けた人は、59%だ。全米では、接種完了者と接種を1回受けた人の割合はそれぞれ54%、63%となっており、同州の接種率はこれらを下回っている。
接種率低い州で需要が急増
連邦政府は9月初め、全米で感染者が急増する中、これまでモノクローナル抗体薬に大きく依存していたアラバマ州など7州に対し、発注数を30%減らすよう求めた。ワクチン接種率が低いこれらの州は、入院者数を抑えるため、モノクローナル抗体薬による治療を行うための施設を次々と開設していた。
保健社会福祉省の高官はフォーブスの取材に対し、モノクローナル抗体薬の供給数を各州に分配することとした措置は一時的なものであり、連邦政府は「より多くを調達するため、積極的に取り組んでいる」と説明している。
静脈内に投与するこの薬は、感染による重症化や死亡を防ぐことに効果的であることが証明されている。米国では現在までに4種類(バムラニビマブ/エテセビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブ、アクテムラ)が、新型コロナウイルス感染症の治療薬として、食品医薬品局(FDA)から緊急使用を認められている。
これらのうち、米リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発した抗体治療薬(カシリビマブ/イムデビマブ)は臨床試験で、使用によって入院・死亡のリスクが70%低下したことが確認されている。
アラバマ州では州医師会に所属する医師らが先ごろ、連邦政府が治療薬の供給量を制限していることについて、「非常に懸念している」との見解を表明。声明で政府に対し、州内の病院がすでに「満床になっており、とてつもないストレスにさらされている」いま、「この治療薬の供給量を減らすのではなく、増やすための」支援をすべきだと訴えている。