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写真左:広尾学園中学校・高等学校理事長・池田富一/右:広尾学園中学校・高等学校インターナショナルコース統括長(英語科教諭)・植松久恵

都内トップクラスの私立進学校として人気を誇る中高一貫の共学校「広尾学園」が、海外大学の合格者数を大きく伸ばしてきた。

合格者数222人という数字は、国内の高校で断トツ1位。進化を遂げる、独自の教育システム哲学を探る。


「抜本的な学校改革を遂行し、2007年に広尾学園としてスタートして以来、日本の将来の教育はどうあるべきかを考え、さまざまな教育システムを構築してきました。近年、国から発信される教育内容を見ると、同じ方向に向かっている。私たちの教育方法は間違いではなかったと安堵している、というのが率直な感想です」

そう感慨深く語るのは、広尾学園・理事長の池田富一(以下、池田)。06年に入職するまでは外資系企業に在籍。豊富な海外経験を通して、自身を含む日本人の英語力の低さを痛感したことから、「日本の英語教育」のテコ入れを志したという。

全教員一丸となり取り組んだ教育改革では、単なる大学受験のための教育ではなく、本物の国際人や研究者を育成するという独自の人材教育を目指した。

その考えのもと、本科に加えインターナショナルコースと医進・サイエンスコースを設置。さらに、生徒たちの「知の探索」をバックアップする「キャリア教育」を充実させるとともに全生徒がネット端末をもつ環境も整えた。当然ながら、外国人教員の層も厚い。彼らは英語科に加えて他教科や担任、部活も担当する。どのコースへ進んだとしても、英語を身近に使いこなせるようなプログラムが組まれている。


“誰のために何をするのか、社会に対してどう貢献するのか” 池田富一

「広尾学園に関心をもたれる方の多くは、新しい教育内容を評価してくださいます。確かにそれは特徴のひとつですが、もっと本質的なことを言うと、教員たちの熱意が非常に高いというのが、いちばんの特徴ではないかと私は思っています。将来を見据え、真剣に生徒と向き合い教育することで、その熱意が生徒と保護者の方々にしっかり伝わっている。人を育てるという教育において最も大事なことです」(池田)

活動の根幹となる「自律と共生」


広尾学園の教育を語るうえで外せないのが、「自律と共生」という教育理念だ。それは同校のシンボルである欅の木のごとく、さまざまな取り組みの根幹を成す。

インターナショナルコースの統括長で英語科教諭でもある植松久恵(以下、植松)は、「学校は、生徒が社会人になる準備をいかにできるかがコアな部分。自律と共生は、グローバル化が進み多様性が求められるいまの時代だけではなく、いままでも、これからもずっと必要な力であり、哲学だと思っています」と語る。

社会生活を重視するのは、植松自身が教員になることを前提に社会人経験を経たという実体験によるところが大きい。

「自ら考え、自ら課題を見つけ、どこが問題なのかを自分で考えられる大人になれたら、社会で活躍できる人間になれると思います。その一方で、社会においては自分ひとりで解決できることはそれほど多くはありません。ですから、課題をどう伝えてどのようにサポーターを確保していくかも大事なこと。そのときに必要になるのが共生という力だと考えています」(植松)

「共生というのは広義ではコミュニケーション能力も含みます。日本語でも英語でも、もしくはそれ以外の言語でも、要点をまとめて相手に伝え、チームとして力を合わせる。そういった言語力を含めた能力を身につけられるよう、本校ではスピーチコンテストなどコンペティションへの積極的参加を促しています」(池田)

「本物との出合い」がもたらすもの


広尾学園の人気を押し上げている最たる理由のひとつが、他校の追随を許さない「キャリア教育プログラム」の充実度だろう。両氏によると、それはまさに実践を通して学ぶ「自律と共生」の具現化でもある。各界のスペシャリストによる講演やセミナー、医療現場の見学、企業のインターンシップなど、その数と質の高さには目を見張るものがある。生徒たちはそのなかから取捨選択し、本物に触れることで、自分が本当に興味のあるものを見極め、探究を深めるという。チームで研究する場合にはコミュニケーション能力も必要になる。

実際に生徒はこのシステムをどのように活用しているのだろう。植松によると、ある生徒は学園の教育システムを、“回転寿司”に例えて解説したという。

 
“自分の限界を知り、限界を突破していくことを学ぶ” 植松久恵

「回っているお皿は、学校が用意してくれるさまざまなイベントという設定です。色々なお皿が流れているので興味があればピックアップすればいい。でも、迷っていると、そのまま流れていってしまって、機を逃す。なので、少しでも興味があったら、取っておくといい。そして、自分の興味のあるものがそこにない場合は中にいる寿司職人(先生)に聞いてみる。するとどこからか探してもってきてくれたり、一緒に考えてつくり出したりしてくれる、と。なるほどなと思いました。生徒は一度や二度は機を逃し後悔するのですが、次回からは絶対に逃してはいけないというふうに自分で学びます」(植松)

なかにはお皿を取りすぎて手一杯になる生徒も。そんなときは「自分の限界を知り、限界を突破していくことを学ぶ」という。

「海外大学では、学業に加えて課外活動や生徒の考え方などを包括的に判断しますので、本校においてはキャリア教育は必須事項だと考えています。また近年は国内有名大学においてもその傾向は顕著です。忙しくて、受験勉強に支障をきたすのではないかと心配される方もいると思いますが、実際にはそんなことはありません。受験勉強というのはモチベーションがすごく大事で、この職業に就くために、この大学のこの学部にいくという目標を定めると、効率的に勉強する方法を考えますし、中身の濃い勉強法に変わっていくんですね。モチベーションを高めるという点では、本校では『誰のために何をするのか、社会に対してどう貢献するのか』を含めて考えなさい、と教えています」(池田)

パイオニアとしての未来開拓へ


広尾学園がなぜ海外大学の合格者数を飛躍的に伸ばすことができたのか。積み重ねた改革の成果を踏まえたうえで、植松はさらに3つのポイントを教えてくれた。

「まずは、生徒数が増えたことで各自の興味や関心に応じて海外大学とのコネクションをつくり、生徒に渡せる情報量をここ数年で一気に増やした点が挙げられます。また6年前に導入したAP(アドバンスト・プレイスメント)というアメリカの共通試験に生徒が興味をもったこと。さらに、奨学金制度のリサーチを徹底し、生徒にも仕組みや交渉方法を伝えたことで、学費が高いから諦めるのではなく、自分でどうにかする方向に考えが転じてきたのも大きな要因かと思います。今後は他校でも海外大学への進学が増えるでしょう。本校はそのパイオニアとして日本の教育界や社会に貢献していきたい」(植松)

広尾学園の価値は、時代を先取りして進化し続けること。池田は、理事長としての思いを最後にこうつづった。

「世界をフィールドに己を磨き、社会人として活躍するとき、守るべきものがあるとすれば、それは日本人の礼節ではないでしょうか。人の気持ちがわかる人間であってほしい。バランスの取れた人間形成にも心を砕きたいと思っています」(池田)


池田富一◎広尾学園中学校・高等学校理事長。外資系企業でマーケティングマネージャー等を歴任した後、2006年に前身の順心女子学園に入職。翌年より同学園は共学化し広尾学園中学校・高等学校となる。新コース設置・運営を推し進め学校改革を主導してきた。17年より現職。

植松久恵◎広尾学園中学校・高等学校インターナショナルコース統括長(英語科教諭)。将来的に教員になることを前提に、幅広い視野をもつべく、いったんは企業人となり数々の国際案件を扱う。2009年に広尾学園中学校・高等学校へ入職。12年より現職。

広尾学園
港区南麻布にある中高一貫教育の私立共学校。前身は1918年創立の順心女子学園。抜本的な学校改革を経て2007年に広尾学園中学校・高等学校として再始動。本科、インターナショナルコース、医進・サイエンスコースがある。
https://www.hiroogakuen.ed.jp

Promoted by 広尾学園 | text by Sei Igarashi | photographs by Shuji Goto | edit by Akio Takashiro

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