ビジネス

2021.09.16

これは、スーパーマーケット版Uberだ。15億ドル稼いだ青年社長が読む「コロナ後」

インスタカート創業者 アプールバ・メタ(Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)


幸いだったのは、ホールフーズがインスタカートとの提携を2年かけて徐々に解消することに同意したことだ。メタはこの期間を使って営業をかけ、あらゆる大手食料品店を訪ねて回った。すると、アマゾンによるホールフーズ買収を受け、多くの小売業者は、インスタカートが動揺したのと同じくらいおびえていることがわかった。「みんな似たような本を読んでいました。アマゾンがある産業に参入すると何が起こるか、という本です」と、メタは語る。そのメタは、当時、アマゾンに比べればはるかに小さな脅威に見えた。ホールフーズがインスタカートから撤退するころには、クローガー、コストコ、アルバートソンズ、ウェグマンズ、そしてパブリックスがメタの取引先に加わっていた。

だが、取引先のあるオーナーは、インスタカートについて、ビジネスの成長を助けてくれた一方で、顧客の注文への対応で得たデータを所有しているため、いまや自身のチェーンに影響力をもつようになっていると恐れている。それに対して、「私たちは取引先の顧客を奪おうとしているのではありません」とメタは主張する。インスタカートには、食料品を顧客に直接販売する考えはみじんもないし、自前の倉庫をもつつもりもないと指摘する。

フェイスブックに取って代わる


「小売業者がアマゾンではなくインスタカートと契約する主な理由の一つは、アマゾンがこれまで、小売業者をインスタカートのように大切に扱ってこなかったからです」とメタは言う。「私たちはそのことをしっかりと理解しています」

インスタカートは初めからこの業界に照準を定めてきたがゆえに、競合する他社よりも、その極めて複雑な世界を細部に至るまで理解している。メタはそう主張するのだ。実際、ウェグマンズやコストコ・カナダなど、175以上の小売業者が金を払って独自のEコマースサイトの運用にインスタカートのシステムを利用している。「照準を定めることは、競争力になります」とメタは言う。

メタは今後の展望に関し、広告プラットフォームを構築中であると言い、それによってインスタカートは、食料品のEコマースでアマゾンに代わる選択肢になったのと同じように、広告プラットフォームとしてもフェイスブックに代わる選択肢になると語る。

メタは例によって、目下の課題をよそにさらなるビジネスに手を伸ばしている。例えばスーパーマーケットの枠を超え、コスメ専門店のセフォラや家電量販店のベスト・バイ、セブンイレブンなどと取引を拡大することだ。

文=クロエ・ソルヴィーノ 翻訳=木村理恵 編集=石橋俊澄

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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