時代を読む、ストーリーのあるホテル No.11「白井屋ホテル」

ヘリテージタワー内「the LOUNGE 」はまさに「街のリビング」。圧巻の吹き抜けのお蔭でとても開放感があり、その空間をレアンドロ・エルリッヒのインスタレーション「ライティング・パイプ」が走る。(photo by Shinya Kigure)


多くの芸術家や著名人に愛された「白井屋旅館」に、新たなる息吹が吹き込まれ、全25室の客室をともなう注目の「白井屋ホテル」。ホテルのエントランスを入ると、目の前のレセプションデスクの壁を飾るのは、杉本博司氏による「海景」シリーズだ。淡水湖の様子をとらえたという印象的な作品は、このホテルの、この場のために描かれた特別な作品という。

ロビーからレストランを過ぎ、緑の植栽に包まれるオールデイダイニングを兼ねたラウンジへと進むと、ちょうどティータイムの時間帯であったことから、地元のゲストらしき人々が何組もテーブルを囲んでいた。

ホテルはこうして近隣の人々が気軽に足を運ぶ光景が見られ、地元に愛されないと生き残れない。スタイリッシュな都会人が折に触れ通ってくれるのは大切なアピールとなるが、日頃から温かく支えてくれる地元のパワーがホテルの礎になる。

この日、滞在した部屋はジュニア―スイート(57平米)であった。シンプルモダンな造りの部屋はアースカラーの彩が優しい印象の上質な客室である。

 
最も大きな客室ジュニアスイートの寝室。隣に広いバスルームとリビングルームがあり、吹き抜けに突き出たバルコニーがある

同じヘリテージタワー内では、英国人アーティスト ライアン・ガンダーの作品が映えるエグゼクティブルーム(52平米)も人気が高い。また、4名のクリエーターがデザインしたアートワークの4室が話題である。

大満足のディナーは、若いシェフ、片山ひろの鋭い感性と巧みな腕が創り出す「上州キュイジーヌ」だ。イノベーティブな“上州”料理の食材に使われるのは主に地元産や名産品で、地元群馬の伝統料理を近未来的にアレンジした料理もある。一品ごとの丁寧な仕上げにも目を見張り、食材本来の香りや特徴が活かされた美味しい料理は、ミシュラン2ツ星の東京青山「フロリレージュ」のオーナーシェフ川手寛康監修によるという。

 
ラウンジに隣接するスタイリッシュな「the RESTAURANT」、若いシェフの感性豊かな料理は、地元の食材をたっぷりと使う「上州キュイジーヌ」(photo by Shinya Kigure)

現在、アルコールの提供ができないが、ソムリエ児島由光の創り出す、ウィットに富んだオリジナルのノンアルコールカクテルが料理を盛り上げる。満足度の高い大人のディナータイムとなった。

 
ノンアルコールドリンクはソムリエが創るスイートなオリジナル・カクテル(photo by Shinya Kigure)
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文=せきねきょうこ

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