コロナ禍で地方移住4倍 1年で8人の移住転職者を採用した「イツノマ」とは

「イツノマ」に移住転職したメンバーたち

コロナ禍で地方への移住が増加している。それを裏付ける調査結果が、2021年7月に発表された。

ビジネスSNS「Wantedly」が行った「コロナ禍における移住と働き方に関する調査」(2021年6月30日~7月6日、有効回答数1968)によると、2021年6月の移住者は、昨年同月比で4.1倍。コロナ禍に入ってから月次の移住者数が増加しているのだ。

また、調査結果からは過去3年以内に「移住」を経験した人は20%、経験していない人の中でも、24%が「移住を検討していた」ということがわかった。

テレワーク主体の働き方になり「家賃が高い都心に住む理由がなくなった」と、地方への移住転職を視野に入れるビジネスパーソンは少なくない。しかし、「知り合いがいないのが寂しい」「都心と比較して仕事が少ないため今後のキャリアが不安」など、移住を伴わない転職に比べてハードルが高いのも事実だ。

そんな中、コロナ禍だった2020年の1年間で、8人もの移住転職者を採用した企業がある。宮崎県都農町でまちづくり関連事業を行うスタートアップ企業のイツノマだ。転職者は全員20代で、ビジネスSNSを使って東京、大阪、高知、神奈川、宮崎、滋賀などから宮崎県へ移住した。

なぜ、イツノマには全国から移住転職者が集まるのだろうか。

課題先進町でまちづくりを


「人からはじまる、まちづくり」をミッションに掲げるイツノマは、2020年1月に代表の中川敬文が設立。宮崎県都農町や同町の財団法人、キャリア教育支援センターなどから委託を受けながら、町のグランドデザインを行っている。

中川は東京都の出身だが、まちづくりに携わってきた。1994年には新潟県上越市に家族で移住し、地元の砂利採取業者に勤務。1999年には建築企画・プロデュースを行うUDS(東京・渋谷)に入社し、2003年からは代表取締役に就任。ここで都農町と出会い、同町のまちづくりを本格的に行うため、2020年に若手に経営を託して独立。東京から単身で移住した。

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イツノマ代表の中川敬文

都農町は人口約1万人の小さな町だ。高齢化率は40%にものぼり、町内唯一の高校も2021年3月末で閉校になった。若者の流出による人口減や後継者不足などの課題があり、まさに日本の課題先進町だ。

「僕は長くまちづくりの仕事をやってきましたが、今までの経験を総動員し、地元に根を生やしてひとつずつ解決したい、という想いで立ち上げました」と中川は語る。
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨

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