バイデンのワクチン接種令、遠隔勤務取りやめのきっかけに?

米大統領 ジョー・バイデン(Getty Images)

ジョー・バイデン米大統領は9日の演説で、約1億人の国民に対し新型コロナウイルスワクチンの接種を求める大統領令に署名すると発表した。

バイデンはワクチン接種を拒否している一部の国民に対する怒りをあらわにし、「私たちは辛抱強く待ってきたが、我慢も限界に来ている。あなたたちの拒否に対する代償を私たち全員が払っている」と批判。デルタ株の感染拡大による感染者急増で医療機関がひっ迫しているにもかかわらず接種に応じない8000万人の国民に「いらだっている」と表明した。

大統領令は幅広い内容だ。100人以上の従業員を抱える企業は、従業員にワクチン接種または毎週の検査のどちらかを受けさせる必要がある。連邦政府の助成を受けている医療施設で働く約1700万人には、ワクチン接種が義務付けられる。政府から仕事を請け負う業者も、同様の義務が課される。医療従事者や政府関係者には、接種の代わりに検査を受ける選択肢はない。

義務化はさらに拡大される可能性もある。バイデンは、メキシコや中南米諸国、アフガニスタンなどからの移民に対する接種義務化には言及しなかった。米郵政公社で働く60万人以上は対象に入っておらず、現時点では接種の義務はない。

この新政策により、各企業が現在進めているオフィス勤務復帰計画に大きな疑念が生じている。大企業の多くはハイブリッド型勤務を導入し、オフィス勤務は週に数日のみで、残りの日は在宅勤務としている。

米国では、一定数の労働者が遠隔勤務の継続をはっきりと要望してきた。アンケート調査からは、遠隔勤務を続けられるのであれば給料カットも受け入れる人が多いことが示されている。1日数時間の通勤を週5日強要されるのであれば、仕事を辞めると答えた人も多い。

ゴールドマン・サックス、JPモルガン、モルガン・スタンレーなど、米ウォール街の投資銀行や金融機関は、従業員に対しオフィス勤務への復帰を強く求めてきた。バイデンの新たな命令を受け、こうした企業はオフィス勤務に抵抗する従業員に復帰を強く促すだろう。ワクチン接種の代わりに週1回の検査を選択する企業も出てくるかもしれない。
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編集=遠藤宗生

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