ビジネス

2021.09.15

機械を壊してでも挑戦しろ! 岡山のデニムメーカーに見た本気度


そのような状況で、クロキ社のすごいところは、優れた技術や世界が驚くデニムを生み出すためには「壊してもいいからチャレンジしろ」と、現場メンバーに言い切っている点だ。壊れたら、また日本のどこかにある同じ織機で譲ってもらえるものを、日本中、汗をかいて周って探せばよいと。

このひと言で優秀な現場メンバーがチャレンジしやすくなり、その結果、見事に世界のジーンズマニアを驚かすような、それこそ“鬼級”なゴツゴツ表面のデニム生地が出来上がった。

私も生地を触らせてもらい、信じられない質感に感動し、後日その生地を使った「ONI DENIM」のジーンズを購入した。ゴツゴツな表面が年月を経てどんな色の落ち方をしていくのか楽しみである。

クロキ社のモノづくり技術力の進化の姿勢には、私も実に学ばされた。

「チャレンジしろ、リスクを恐れるな」

どこでも聞く言葉だが、本当に失敗の許容をどこまでできているだろうかと、思わず自問した。

チャレンジできる風土をつくることは、壊すことをどこまで許容できるかに比例する。岡山の山あいにある世界レベルの企業に、そのことを教えてもらった気がする。

ふだん何気なくはいていたジーンズの裏にも、そういった多様なモノづくりの世界が広がっている。当たり前の製品の背景に、いろんなモノづくりのこだわりや工夫が詰まっていると思いをはせながら、いままでと違った目線で店に並ぶジーンズを眺めている自分がいる。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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