トップショップの親会社アルカディアを率いるグリーン卿は、破産プロセスの一環で、最後の資産を手放そうとしている。
この売却額は、5月のロックダウンの真っ只中に報じられた希望額の5億8200万ドルをやや下回るが、経営破綻した小売帝国アルカディアの巨額の債務の処理に苦慮するグリーン卿にとって大きな後押しとなる。
この売却によってグリーン卿は、米国のプライベート・エクイティ大手アポロ・グローバル・マネジメントへの負債4億2500万ドルを全額返済することが可能だ。さらに、残りの1億900万ドルは、アルカディアが抱えるより多くの債務の返済に充てられる。アルカディアの破産管財人のテネオは、7月に債務の総額が24億ドルに達したと述べていた。
今回報道された取引は、まだ完全に成立しておらず、物件の管理者のレッドキャッスは肯定も否定もしていないと広報担当者は述べている。また、この報道について、スウェーデンの大手家具メーカーのイケアも完全に否定していない。
イケアの広報担当者は、フォーブスの取材に対し、「当社は、都心へのアプローチの一環として新たな立地を模索しているが、現時点でその戦略を共有する予定はない」と述べた。
イケアの店舗の多くは、車で店に来る顧客に依存しているが、小売コンサルタントのNick Buddは、同社のロンドンの物件への入札が「賢明な行動だ」と評価している。彼は、この物件に十分なスペースがあり、レストランも併設されていると述べた。
報道によると、このビルには現在ナイキとVansが入居しているが、イケアが来ても閉店する必要はないという。イケアは、ロンドンの家具店が多いエリアとして知られるトッテナム・コート・ロードに「プランニング・スタジオ」と呼ばれる店舗を構えている。
放漫経営やセクハラ、人種差別
英国の有名ブランドのトップショップやトップマン、ミス・セルフリッジなどの400店舗を運営し、1万3000人の従業員を抱えるアルカディアは、昨年11月に破産を申請した。破産管財人のテネオは、同社に対する請求額が24億ドルに及ぶと述べていた。
アルカディアは、2月にトップショップを含むブランドを競合のASOSに売却し、8億2000万ドル以上の資産を売却して負債の清算に充ててきた。
しかし、テネオは7月に開示した進捗報告書で、アルカディアが資産の売却で得られる資金は、グリーン卿の小売帝国の負債額をはるかに下回る見通しだと述べた。
フィリップ・グリーン卿(左)(Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for TOPSHOP)
グリーン卿は近年、セクシャルハラスメントや人種差別的行動で警察の捜査対象となったが、2015年には同じく経営危機に直面したアパレル大手ブリティッシュ・ホーム・ストアーズ(BHS)の経営再建を途中で投げ出し、約1万1000人の労働者を解雇の危機に追い込んだことでも、英国の政治家の怒りを買っていた。英国議会は2016年にグリーン卿の爵位剥奪を決議したが、彼は今も爵位を保持している。
フォーブスは、グリーン卿とその妻の保有資産を24億ドルと試算しているが、その多くは2005年にアルカディアから支払われた17億ドルの配当金だ。