声の主は、アシックスのアパレル・エクィップメント統括部デザイン部DTC/SMUデザインチームに所属する大堀亮だ。日本代表選手団のオフィシャルスポーツウェアの開発を担当した。なかでも、ポディウムジャケット(表彰式や選手村で着用)は、同社の技術が最大限に搭載されているという。今夏、ポディウムジャケットはじめウエアやシューズのレプリカモデルが販売となった。選手らが着用していたこれらのアイテムの開発背景について大堀氏に聞いた。
1つのデザインで選手全員が正しく着用できるウエア
日本代表選手団のウエアといえば、朱色のそれだ。サンライズレッドといい、朝日が昇る力強さをイメージした鮮やかな色が採用されている。このカラーはここ数年のあらゆる国際的なスポーツ大会で着用されてきた。遠くから見ても日本人選手がすぐわかるくらい、インパクトのあるものだ。しかし、このウエアは、見た目の鮮やかさだけで語るにはもったいないほどの仕組みが搭載されている。
「表彰台にはジャケットを着用して参加するという決まりがあるのですが、日本の夏は非常に暑い。そんな中でも快適に着用するためには何が必要かと考えました。肌に触れると冷たさを感じる接触涼感素材があるのですが、これでは一時的にしか体を冷やしません。アシックススポーツ工学研究所で検討を重ねて『通気性』に着目。二層のメッシュ構造で通気性を高め、ジャケット内の温度を効果的に下げる『ACTIBREEZE-TECH(アクティブリーズテック)』という構造を開発しました」
スポーツウエアにおいて、通気性はあればあるほど良いというわけではない。空気が通り過ぎると今度は体を冷やしすぎてしまうという問題がある。アクティブリーズテックでは、全体的にメッシュ構造とするのではなく。体が熱くなりがちなゾーンを導き出し、そのポイントに対して重点的にメッシュの編み目を大きくした。そうすることで、メッシュ構造内で空気が流れるようになり、効率的な通気が可能となるのだ。
実際に歩いているだけで、振った腕から風が入ってくるので不思議だ。風を通すことで衣服内環境を整える。日本の高温多湿の気候に対応した同ウエアは、多くのシーンで選手が着用することとなった。