ビジネス

2015.05.25

全米屈指のデベロッパー ハワードヒューズ社が試みる、ホノルルの中心に誕生する 環境未来都市とは

ハワードヒューズの開発担当者(左)ニコラス・D・ヴァンダーブーム氏、(右)レイス・ランドル氏<br />(Forbes JAPAN7月号より)



ワードビレッジが描くハワイの未来図
ワイキキとダウンタウンの間にもうひとつ人々が集まる街をつくる。
この壮大な再開発によってハワイにもたらされるのは“新しい価値観”だと、若き開発担当者たちは語った。


目の前には紺碧の海。振り向けば緑豊かな山。年間を通して爽やかな天気と心地よい風に恵まれ、住まいからの眺めはもちろん最高。
採れたてのシーフードやオーガニック野菜を取り扱うショップやレストラン、小川を備えた公園、セイリングなどを気軽に楽しめるマリーナ、空港まで14 分のモノレール駅すべてが徒歩圏内。単なる高級コンドミニアムの建設ではなく、街全体を創造するワードビレッジがもたらすのは、誰もが憧れるそんな暮らしだ。しかもこのプロジェクトはハワイで唯一、建築の環境性能を評価するLEEDの最高ランク、プラチナ認証を取得。歩行者優先の設計、水と電力の節約、資源の再利用などを含むサステイナブルなデザイン性も高く評価されている。まさに未来の環境都市とも呼べる街が、ホノルルの中心地に誕生することになるわけだ。

この一大再開発を担当するのは、ハワードヒューズの若きビジネスエリートたち。30 代のニコラス・D・ヴァンダーブームとレイス・ランドルは、どちらも昨年子どもが生まれたばかり。個人的にも未来の街づくりに対する責任をリアルに実感するようになったと語る。
「ワイキキは美しい場所ですが、統一されたデザインコンセプトがなく開発された。だからホテルがたくさんあって旅行者は集まるけど居住するローカルの人は少ない。私たちが創造するのは、ハワイの自然や文化を尊重した居住のためのコミュニティエリア。ローカルの人や海外から移り住む人など、さまざまなレイヤーの人が共生する未来都市のモデルにしたい」とヴァンダーブーム。2009 年にマスタープランが出来上がったあと、最初の2年は地元のコミュニティ関係者や近隣住民と協議を重ねることに費やした。そして公共エリアや建物のデザインに土地の歴史や文化を反映させることで、地域との共存を第一に考える姿勢を打ち出し、実際、既に建設中のコンドミニアム「アナハ」は、その半分以上がローカルの人々によって購入されているという。

この6月に新たに販売が開始される2棟建ての「ゲートウェイタワーズ」では、ワードビレッジの住人と居住者以外の人々がともに憩える場所として、2つの建物の間に「ビレッジグリーン」と呼ばれる広大な公園スペースが設けられる。そしてこの公園の開発には、プランの核心ともいえるエピソードが秘められていた。「この敷地を調査しているときに、地下に山から海に向かって川があるのを発見したんです。それは旧ワードプランテーションの水路でした。かつてこのエリアには、内陸にあるコオラウ山脈からの水が湧き出していた。それが過去の開発で地下水路へと工事された。それでゲートウェイタワーズの2つのビルの間に公園をつくって、この川を再び地上に流すアイデアが生まれました。島の生活において山からの新鮮な水はかけがえのないもの。公園に自然の湧き水を生かした小川をつくることで、土地と自然の関係を再生したいと思ったんです。ここは全体のプランのなかでも特にシンボリックな場所になるでしょう」とランドル。
この公園は、同時に整備されるケワロ湾のハーバーとワードビレッジ中心部を結ぶ遊歩道の役割も果たす。数年後、おそらくNY のハイラインのように、このゾーンはホノルルを代表する新たなスポットになっているに違いない。

 ワードビレッジがハワイの未来にもたらすものはほかにもまだある。ヴァンダーブームが答えた。「このプロジェクトによってハワイ州は毎年約3,100万ドルの住宅税収が得られる。また建築のための労働、ビルの管理、ショップなどの雇用創出も含めれば多大な経済効果をもたらすでしょう。しかし重要なのは、安全で快適に整備された暮らしが郊外の一軒家ではなく、都市でも実現できるという実例を示すこと。クルマを使わず徒歩圏内に日常に必要なもの、余暇の時間を過ごす空間がすべてある。その新たな暮らし方の価値観をハワイにもたらす。それが私たちの目標でもあります」。

 豊かな自然環境と都市の利便性、その両方を同時に手にできるこの場所だからこそのエクスクルーシブなライフスタイルは、これまでハワイに興味がなかった人々への訴求力にもなるはずだと、ふたりはプロジェクトへの並々ならぬ自信をのぞかせた。

開発エリア全景。エリア正面のケワロ湾のヨットハーバーもハワードヒューズ が45年間リースし、全面整備が行われモダンなマリーナが誕生する。
開発エリア全景。エリア正面のケワロ湾のヨットハーバーもハワードヒューズ
が45年間リースし、全面整備が行われモダンなマリーナが誕生する。

工事が進むワードビレッジの現在。
工事が進むワードビレッジの現在。


目の前のアラモアナ・ビーチパークも、BBQなどが楽しめる美しい公園に生まれ変わる予定。
目の前のアラモアナ・ビーチパークも、BBQなどが楽しめる美しい公園に生まれ変わる予定。

取り壊し寸前だった旧IBMビルも再生。トレードマークでもあるミッドセンチュリー・デザインのコンクリートの外壁はそのまま残された。
取り壊し寸前だった旧IBMビルも再生。トレードマークでもあるミッドセンチュリー・デザインのコンクリートの外壁はそのまま残された。

かつてこのエリアは、ハワイ王朝時代の伝説的実業家カーティス・ペリー・ワードのファミリーが所有していた。
かつてこのエリアは、ハワイ王朝時代の伝説的実業家カーティス・ペリー・ワードのファミリーが所有していた。

それぞれのコンドミニアムには地域の文化に関連したデザインが施されている。プロジェクトの概要は旧IBMビル内のワードビレッジ・セールオフィスで確認できる。
それぞれのコンドミニアムには地域の文化に関連したデザインが施されている。プロジェクトの概要は旧IBMビル内のワードビレッジ・セールオフィスで確認できる。

ワードビレッジ ジャパン ギャラリー
東京都港区白金2-5-16-801 0120-635-008

text by Miho Sauser | photographs by Tetsuya Miura

この記事は 「Forbes JAPAN No.12 2015年7月号(2015/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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