(前回の記事:臨床心理士のみたらし加奈と話す「LGBTQ+とメンタルヘルス」のこと)
今回はアーティストのSIRUPをゲストに迎え、アートとメンタルヘルスの関係性について考えていく。ライブや楽曲制作などアーティストとして創作活動を行う傍ら、自身のSNSを通じてメンタルヘルスや社会問題についても発信を行う様が印象的だが、彼が声を上げ続ける背景にはどのような思いがあるのだろうか──。
「自分を大切にすること」を知れるように
愛:「SIRUP TOUR 2021 cure」お疲れ様でした。ツアーを終えて、ようやく少し「自分の時間」ができたのではないかと思いますが、最近の心の調子はどうですか?
SIRUP:正直、最近は自分でも働きすぎではないかなと思っています。ツアーが終わって心がかなり疲弊している状態で、いまはとにかく休んで身体の健康を回復すること、そして感情と向き合うことを意識しています。もともと自分自身浮き沈みが激しいタイプだということもあり、メンタルヘルスの情報などを発信するようになったのですが、発信や勉強を行うなかで、自分に合ったメンタルヘルスとの向き合い方を見つけるのは時間がかかることだなと実感しているところです。
愛:大きなイベントや仕事が終わった後の心のケアは特に大切ですよね。まだ自分に合ったメンタルヘルスとの向き合い方を探している最中だとおっしゃっていましたが、普段の生活のなかでは、どのようなセルフケアを行っていますか?
SIRUP:ツアーが終わってから沖縄や大阪に一人で行ったり、海で本を読んだり、散歩に行ったり。そういう時間を作ることで、頭の中を整理することができます。反対に、携帯も見ずに全く考え事をしないこともすごくすっきりできる方法の一つです。
特にコロナ禍に入ってからは、日本のメンタルヘルス教育がどれほど足りていないかに気づかされました。なので意識的に新しい知識を身につけたり、学び直したりしているけど、そのこと自体にストレスを感じることもあるので、自分にとってベストなセルフケア方法は、とにかく何も考えない時間を作ることだといまは思っています。
あとは、これまで自分が疲弊していたのって、どんな時でも全力で相手に向き合いすぎて、自分自身を大切にすることを忘れてしまっていたからだと思うんです。でもしんどい時は、無理していろいろなものに向き合うことを自分に強制しなくていいと、いまでは思っています。
愛:SIRUPさんがミュージシャンになりたいと思ったきっかけを教えてください。
SIRUP:もともと音楽が好きで、中学生の頃から少しずつ歌手になりたいと思い始めました。高校に入るとAlicia KeysやStevie Wonderをはじめ、R&Bやソウルにも興味をもつようになりました。その後に同じく音楽好きの兄の誘いでイベントなどに出るようになって、気がついたらいまにたどり着いている感じですね。