インドで高致死率のニパウイルス感染を確認、1人死亡で警戒高まる

ニパウイルスのイメージ(KATERYNA KON/SCIENCE PHOTO LIBRARY)


感染の初期の段階において、この感染症に特有の症状はない(無症状の場合もある)。そのため診断には、脳脊髄液や尿、血液、そして鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査が必要になる。

ニパウイルスの感染者は、多くが脳炎を発症する。その症状には、眠気、失見当識、錯乱、発作などがある。発症すると24~48時間以内に昏睡状態に陥るケースもあり、そうなれば、回復する確率は相当に低くなる。

マレーシアとシンガポールでニパウイルス感染症が流行した1999年には、300人近くが感染し、そのうち100人以上が死亡。感染拡大を食い止めるため、養豚場のブタ100万頭以上が殺処分された。それ以降は主に、バングラデシュとインドで流行が繰り返されている。

改めて考えたいこと


ニパウイルスには、新型コロナウイルスほど強い感染力はないかもしれない。だが、過去の流行時には、かなり短期間の間に感染が広がった。また、現時点では感染を防ぐためのワクチンがないほか、治療法も確立されていない。感染者には抗体ができる場合もあるが、その抗体によって次の感染が防がれるのかどうかは不明だ。

つまり、ニパウイルスの感染拡大を防ぐためにできることは、ソーシャルディスタンスを取ること、マスクを着用すること、手指衛生を心掛けること、人が触るものを消毒すること以外、ほとんどない。

これらは、2020年初めから始まった新型コロナウイルスの流行と同じように、ニパウイルスが瞬く間にパンデミックを起こす可能性もあることを意味している。そしてまた、コロナ禍が続く中でも、別のウイルスや病原体による感染症が流行し、より大きな問題が起きる恐れもあることに対して、改めて注意を促すものでもある。

編集=木内涼子

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