インドで高致死率のニパウイルス感染を確認、1人死亡で警戒高まる

ニパウイルスのイメージ(KATERYNA KON/SCIENCE PHOTO LIBRARY)

インドでは現在、パンデミックを引き起こす可能性があるウイルスの感染拡大を押しとどめようと、当局が緊急の対応にあたっている──新型コロナウイルスの話ではない。問題は、同国南部で9月5日に感染による死者が確認された二パウイルスだ。

死亡したのは、高熱のためケララ州の病院に1週間ほど入院していた12歳の少年。亡くなる前には脳炎の症状がみられていた。国立ウイルス研究所で行った血液検査でニパウイルスが検出されると、当局は即座に少年の接触者追跡を開始。二次接触を含め、260人以上の接触者がいたことを確認した。9日までに、このうち約70人に隔離が指示されている。

当局がこれほど迅速に対応したのは、このウイルスによって「身動きが取れない」状態になることを避けたかったためだ。

新型コロナと同じ「危険な感染症」


二パウイルスはすでに、危険なウイルスであることが知られている。1999年にマレーシアで流行したときには、致死率は40~70%(その後の流行ではそれ以上)だった。現在も新型コロナウイルスと同様に、世界保健機関(WHO)の「世界にとって最大の脅威となりうるウイルス」のリストに挙げられている。

パラミクソウイルス科ヘニパウイルス属のニパウイルスが引き起こす感染症は、動物と人のどちらの間でも感染が広がる「人獣共通感染症」のひとつだ。宿主となる動物は複数とみられるが、主にフルーツバット(オオコウモリ)とブタと考えられている。

感染経路は主に3つ。感染したコウモリやブタ、またはその体液(尿、血液、唾液など)に直接触ること、このウイルスで汚染されたものを食べること(果物やヤシの樹液などには、コウモリの排泄物や唾液が付いている可能性がある)。そして、感染者との濃厚接触や、その体液(呼吸器からの飛沫や尿、血液など)に触れることだ。

米疾病対策センター(CDC)によると、ニパウイルス感染症の潜伏期間は4~14日。一般的な初期の症状は発熱と頭痛だが、咳や喉の痛み、呼吸困難などの呼吸器症状を伴う場合もある。これらの初期症状は、3~14日続くとされている。
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編集=木内涼子

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