金融教育のアンケートから見えてくる、女性たちの危機意識

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そのような状況下にありながら、冒頭で紹介したイベントに参加した女性たちは、なぜ貴重な余暇の時間を金融教育に充てて投資について学ぼうとするのか。受講後に行ったアンケートの調査結果にその答えが隠されていた。

特徴的だったのは、「将来、何かしらの理由で離婚を考えなくてはいけなくなった際に、自分である程度の資産を持ち、かつ稼いだり増やしたりする知識や経験がないとその決断に至れない」というものだった。

確かに収入の全てを夫に依存してしまえば、仮にDVなどを受けたとしても、即座に離婚を決断できないものだ(当然夫が妻に収入を依存しているケースもあるが、今回は触れずにおく)。離婚をしても養育費がもらえるじゃないかと思うかもしれないが、現実は非常に厳しい。

厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課が今年の4月に発表した「ひとり親家庭等の支援について」によれば、母子世帯の平均年間就労収入は200万円だ。また、同省が発表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によれば、離婚した父親からの養育費の受給状況で「現在も受けている」と回答したのはたった24.3%、しかも養育費の平均月額は4万3707円にすぎない。母子世帯になると一気に困窮状態に追い込まれてしまうことがわかるだろう。

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さらに、シングルマザーの2割以上が「未婚の母」か「死別」である。言うまでもなく、こうしたケースでは基本的に彼女らは養育費を受け取ることはない。

データに基づけば依然として女性の方が家事や育児を担当する時間が圧倒的に多い事実があるなかで、緊急事態に備えて労働以外にも資産を増やせる選択肢を持とうとするのは至極当然であろう。

家庭で金融教育を行う準備として


前述の離婚の件以外にも、筆者がアンケートの調査結果で注目したのは、「将来自分が子どもを持った時に子どもに早くからお金の話をしてあげたい」というコメントだった。

日本では子どものときから金融教育を受ける機会は多くなく、ほとんどの人が大学生や社会人になったとき、はじめてお金に関わる判断を何度も求められ、結果として不要な金融商品を買ってしまったり、金融詐欺の被害に遭ってしまったりする。

日本でも来年から高校の家庭科の授業で金融教育が始まるとはいうものの、既存のカリキュラムとの関係もあり、十分な時間と内容が用意されているわけではない。そうなると、家庭での金融教育が非常に重要になってくる。しかし、それは親がまずお金の知識を持っていることが前提となる。

私たち大人が金融教育を受けて投資や経済の知識を身につけることは、自身の資産を運用するうえでも大切なことだが、同時に自分の子どもに対して家庭での金融教育を行う準備にもなっているといえよう。

連載:0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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