金融教育のアンケートから見えてくる、女性たちの危機意識

Pakin Songmor/Getty Images

先日、女性のためのオンライン金融教育「ABCash」を展開するABCash Technologiesが主催した、女性限定の金融教育イベントに参加させてもらった。朝から夕方まで長い時間の座学であったが、参加者たちは終始真剣な姿勢で受講していた。

イベント終了後にとったアンケート調査を眺めていると、女性ならではの感想が多く寄せられていた。今回は女性たちが必要としている金融教育について書いてみたいと思う。

親子で違いのないお金に対する知識


筆者は、2018年6月に金融教育ベンチャーのマネネを創業して以降、いろいろな人たちに金融教育の講義をしてきたが、実は男性と女性を意識的に区別して教える内容を変えたことはなかった。

このご時世なので、あまり男女で区別をするのもよくないのではという考えがなかったといえば嘘になるが、実際にそこまで男女で話すべき内容に差異が生じるとは思っていなかったということがいちばんの理由だ。

むしろ意図的に区別していたのは大人と子どもだった。マネネの創業当初は子ども向け金融教育に特化していたのだが、お金に対してネガティブな考え方を持つ親は多く、子どもにお金の話をしないで欲しいという人が多くいた。そこまで怪しいと思うなら同席をしてくださいと、ある時から親子一緒に講義を受けてもらう機会を増やした。

前半は子ども向けにお金の基礎的な話をして、後半は大人向けの時事ネタも絡めたビジネス寄りのお金の話をするようにしていた。すると、意外なリアクションが待ち受けていた。参加した親たちのなかには、子ども向けの話は目を輝かせて聞いていたのに、いざ大人向けの話になると居眠りをしたり、スマホをいじったりする人が現れたのだ。

講義後のアンケートを見てみると、子ども向けの話の方が圧倒的に評判が良く、多くの親たちが「自分が子どもの時にこういう話を聞く機会があればよかった」というコメントを残してくれた。つまり、お金の知識については大人も子どももそれほど大きな差異はなかったということだ。

女性にとって金融教育が必要な理由


大人と子どもでお金の知識に大きな差異はなく、それこそ大人向けの講義も子ども向けの内容と同じで良いということがアンケートから分かったのだが、一方で、男性と女性では少し話の内容を変えた方が良いということは、前述のアンケートによって判明した。その背景についてデータを基に見ていこう。

下図は、総務省が発表している「労働力調査」のデータを基に、専業主婦世帯と共働き世帯の数の推移を示したものだ。1980年以降、夫婦ともに雇用者である共働き世帯は年々増加し、1997年以降は共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転し、その後は差がずっと拡大し続けていることがわかる。

このデータを見て女性の社会進出が進んだ結果だと喜ぶ向きもあるが、必ずしもそうではなく、日本の賃金が下がるなかで共働きでないと余裕をもった生活水準を保てないという事実もあるということだ。

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出所:総務省「労働力調査特別調査」(2001年以前)及び総務省「労働力調査(詳細集計)」(2002年以降)のデータを基に株式会社マネネが作成。
注:専業主婦世帯は男性雇用者と無業の妻からなる世帯、共働き世帯は雇用者の共働き世帯。

内閣府の男女共同参画局が発表したデータに基づけば、女性が「家事・育児・介護」にかける時間は1976年からほとんど変わっておらず、わずかに減少している程度だ。これは晩婚化や未婚化等によるものであり、結婚して子どもを持つ女性に限ってみれば、共働き・専業主婦の「家事・育児・介護」にかける時間は、むしろ増加しているといえる。

つまり、現在の女性は働きながら家事や育児をすることが多く、投資について学ぶなどの自己投資に充てる時間を確保するのが難しいということになる。
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文=森永康平

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