ビジネス

2021.09.10

「やってみなはれ」は仕組み。危機で見つけたサステナブル・グロースの手法

サントリーホールディングス代表取締役社長 新浪剛史


──グレート・コミュニケーターとして社員にうまく伝えるコツは?

常に自分の発言はまだわかってもらえていないだろうな、腹落ちしていないだろうなと思うようにしています。なぜなら、それが組織の特性だからです。上下関係のなかで、「社長の言っていることをわかっていないとまずい」という心理は必ず働き、わかったふりをしたり、無意識に忖度もしたりする。大きな組織になればなるほど仕方がないと覚悟することです。だから嫌になるほど同じことを何度も伝えます。

それでも伝えることが重要だと思うのは、病院給食会社時代の経験が大きい。私は調理の現場に入って、コックさんたちとしょっちゅう衝突していました。お互い、理解ができないので衝突するのです。ところが、現場を理解しようと努力し、自分の意志をわかってもらうために前向きな言葉で伝え続けたところ、モチベーションに火がついたのです。スイッチオンしたときの人間の変わりようはすごい。言葉ひとつで人間は大きく変わる。

つまり、聞いている人たちに共鳴を求めなければいけない。世の中、自分ひとりでは生きていけません。それはビジネスのあり方や社会に対する姿勢も同じだと思うのです。



にいなみ・たけし◎サントリーホールディングス代表取締役社長。1959年、神奈川県生まれ。ハーバード大学経営大学院にてMBA取得。三菱商事を経て2002年ローソン社長に就任。経済財政諮問会議民間議員。経済同友会副代表幹事、日本経済団体連合会審議員会副議長。世界経済フォーラム インターナショナル・ビジネス・カウンシル メンバー。外交問題評議会(Council on Foreign Relations)Global Board of Advisorsメンバー。国際商業会議所(ICC)エグゼクティブ・ボードメンバー。14年より現職。

インタビュー=藤吉雅春 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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