エルサルバドルの40歳の大統領のナイブ・ブケレは、数カ月前からChivoウォレットの準備を進め、シリコンバレーの暗号通貨のユニコーン企業「BitGo」にインフラとセキュリティプラットフォームの構築を依頼した。
Chivoのウォレットアプリをダウンロードしたエルサルバドル国民は、30ドル相当のビットコインを受け取れる。政府は現在の登録者数を公表していないが、約500万のウォレットの立ち上げに向けて、1億5000万ドルの予算を用意していた。
BitGoのCEOのマイク・ベルシェは、先週の筆者の取材に「デジタル資産は、エルサルバドルの人々に経済的自由をもたらすことになる」と述べていた。
現時点でChivoウォレットは、ビットコインと米ドルのみに対応し、ユーザーは手数料無料で、他の人と資金をやりとりできる。しかし、ウォレットから資金を引き出す際には、手数料が発生する。BitGoは、エルサルバドルの中央銀行と「小さな商業関係」を結んでいるが、金銭的な条件は明らかにされていない。
ChivoのATMから引き出す男性(Roque Alvarenga/APHOTOGRAFIA/Getty Images)
2013年に設立されたBitGoは、ゴールドマン・サックスやレッドポイント・ベンチャーズなどから7000万ドル以上を調達しており、毎月500億ドル(約5.5兆円)以上のビットコインを処理する世界最大級の暗号通貨ウォレット企業だ。同社は、コインベースやBlockchain.comなどとの競争に直面しているが、預かり資産は昨年末から約2倍の400億ドルに増加し、400以上の機関投資家と150の取引所にサービスを提供しているという。
BitGoの出資元のGalaxy Digital(億万長者のマイク・ノボグラッツが設立した暗号通貨の金融サービス会社)は今年5月、現金と株式の合計12億ドルでBitGoを買収すると発表した。BitGoは、今後Galaxyの事業に統合されてオペレーションを続けるという。
しかし、エルサルバドルの前例のないビットコインの受け入れは、暗号通貨のボラティリティの激しさや、様々な課題にも直面している。