客からのオーダー対応が不要になるため人件費を削減でき、スマホをタップするだけで注文ができるため客単価の向上も期待できる。消費者にとっては、慌ただしく接客にあたる従業員を注文の度に呼び止める必要がないというメリットがある。
山田真央は2018年、そのモバイルオーダーのPOSシステムを飲食店に提供する事業を柱に「ダイニー(dinii)」を起業した。
店舗の各テーブルに設置されたQRコードを読み取ると、スマホにドリンクや食事メニュー画面が表示され、注文ができる。専用アプリのダウンロードは必要ない。
しかし山田は、「ダイニーが提供するモバイルオーダーの本質は、初めて来店したお客様が半自動的に会員登録されること。これは外食産業の歴史におけるイノベーション」と話す。
というのもダイニーはLINEと提携しており、客がQRコードを読み取り認証してログインをすると、LINEアカウントが店のPOSシステムと結びつく設計になっているため、継続的な来店を促せる。
撮影=曽川拓哉
「コロナ禍で飲食店は、イートインを取り止めたり、時短要請を受けた。その中でも売り上げを作らなくてはならず、テイクアウトやデリバリー、ECを始めようとするが、お客様に対して案内するすべがなかった。ホームページや食べログを介して発信してもなかなか届かない。ダイニーなら、1度来店したお客様が店舗のLINEアカウントに友達登録され、店からクーポンやお知らせをいくらでも送ることができる」と山田は言う。
同社のPOSは、串カツ田中を始め全国の店舗に導入され、新規顧客数は毎月30%ずつ増加している。
「投げ銭」でおもてなしに価値を
山田はさらに、モバイルオーダーを使った、接客に対する評価の可視化にも可能性を見出す。仕掛けるのは「投げ銭」機能だ。