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世界保健機関(WHO)が8月30日に「注目すべき変異株(Variant of Interest)」に指定した新型コロナウイルスの変異株「ミュー株」に、既存のワクチンがまったく有効ではないことを示すものは、今のところないかもしれない。だが、この変異株についてはまだ不明な点が多く、明確な結論を出すことはできない。

米国ではほぼすべての州で、この新たな変異株が検出されている。感染例が最も多く特定されているカリフォルニア州のロサンゼルス郡公衆衛生局は、少なくとも今年6月中旬には、郡内でミュー株が特定されていたことを明らかにしている。

ただ、実際にはミュー株は、それほど「新しい」ものではない。コロンビアで1月に、最初に検出されている。それ以降、感染が報告される地域は拡大し、すでに40を超える国・地域で報告されている。

変異株が新たに出現することは、大きな驚きではない。ウイルスは複製を繰り返す中で、エラーを起こすからだ。感染が拡大するほど、複製が繰り返されるほど、より多くのエラーが発生し、より多くの変異株が出現する。

そして、ペルーやブラジル、インド、英国、そして米国のように感染の拡大を封じ込めることができなかった国々では、これが起こり続ける。WHOが新たな変異株に名称として付けるギリシャ文字が、使い果たされてしまう可能性も否定はできない。

慌てる必要はない?


当然ながら、より大きな問題は、どの変異株がより深刻な問題になるのかということだ。人々を再びトイレットペーパーの買いだめに走らせる変異株は、出現するのだろうか。

ミュー株については、まだ謎が多い。だが、いくつか気になる変異が起きていることが分かっている。アルファ株にも見られるP681H変異は、ウイルスが細胞に侵入しやすくなることを示している。つまり、感染力が高まる可能性があるということだ。

また、その他の2つの変異、ベータ株にも見られるE484KとK417Nは、抗体を回避しやすくなった、ワクチンと自然免疫のどちらによる防御も弱まった可能性があることを示唆する。

さらに、ミュー株にはこれらとは別の、免疫による防御をすり抜け、感染を広げる可能性があるかもしれない変異(R346K、Y144Tなど)が確認されている。この変異株について、まだ最終的な判断が下されたわけではないといえる。何が問題かを明確にするためには、さらなる研究が必要になる。

ただ、より多くのワクチン接種完了者がミュー株に感染しない限り、ワクチンがこの変異株に対してどれだけ有効かを判断することは、非常に難しい。これが、この問題に内在するパラドックスだ。接種完了者と未接種者のうち、最終的にどれだけの人が感染するかを研究者らが確認できるまで、感染の拡大を許すというわけにはいかない。

それでも、今の時点でパニックに陥る必要はないかもしれない。通常は、根本的に異なる「逃避変異」を起こしたウイルス、または既存のワクチン接種によって得られる防御効果を回避できるようになった変異株が、突然出現することはない。ウイルスは時間の経過とともに、徐々に変化していく可能性が高い。

ただ、このミュー株は、私たちには引き続き、ソーシャルディスタンスの確保とマスクの着用が重要であることを再認識させるものだ。今はまだ、予防的措置を緩和させるときではない。時期尚早の行動は、失望と好ましくない状況を招く可能性がある。

編集=木内涼子

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