また、成長中のブランドは、消費者に自分ごと化してもらうための「余白」がうまく引き算されている。「九州パンケーキ」で有名な一平ホールディングスグループの九州テーブルが新たに仕掛けた「九州チーズタルト」は、まさにその典型例といえるだろう。
パンケーキと同じく、九州の産地で育まれた厳選素材を採用したチーズタルト。地域の素材に徹底的にこだわるというブランドの強烈な思いに共感した消費者たちは、そのストーリーを他人に共有することで、自分がブランドの成長の一助になっているような親近感を抱いている。
特に地元である九州地域の消費者や小売業者などの協力会社から愛されており、デビュー直後から販売を応援する発信が多くみられた。2021年にできたばかりの新ブランドだが、Makuakeでのプロジェクトが開始から3週間で目標額の1000%を超えるなど、初速からすさまじい勢いをみせている。まさにファンがブランドストーリーに入り込むことで完成している一例で、従来の「完璧さ」を提供するやり方とは一線を画している。
ちなみに、補足しておきたいのだが、上にあげたどのブランドも、味は驚くほどおいしい。スイーツのブランドづくりには、そもそものおいしさ自体が突出していることが前提条件となることを忘れてはいけない。味という土台がなければ、消費者は背景にあるストーリーに目もくれないからである。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。