最近のおいしいスイーツを他人におすすめしたくなるワケ

近年、いろんな領域で重要視されるようになった顧客関係の再構築。スイーツブランドでも、新しい手法でファンを獲得する事例が増えている。

コロナ禍による巣ごもり生活のなかで、在宅時間をより豊かに過ごしたいとスイーツを楽しんでいる人は多いのではないだろうか。実は私もその口なのだが、ここ数年、スイーツ業界では新興ブランドの成長が目立つようになってきたと感じる。

実際、Makuakeがかかわった案件でも、ビーントゥバーチョコレートの「Minimal」やチーズケーキの「Mr. CHEESECAKE」、プレミアムビターキャラメルバーの「GENDY」など、知名度や人気を高めるブランドが次々と誕生している。しかも、これらのブランドは、従来の王道パターンとは違うやり方で消費者を味方につけているのだ。

これまで、ヒットを飛ばすスイーツブランドといえば、海外ですでに伝統や知名度があるブランドが日本に進出する場合や、世界的なコンクールで受賞経験のあるパティシエが新たに立ち上げたブランドという場合が多かった。そこでは、つくり手をカリスマ化させるなど、ブランドにはある種の「完璧さ」が求められ、ファンとの距離感はプロデュースするうえで強く意識されなかった。極端にいえば、消費者はあくまで消費するだけの役割だった。

一方、いま成長中のスイーツブランドは、ファンとの距離感とブランド体験のつくり方が大きく異なる。例えば、Minimalは私も大好きなチョコレートブランドなのだが、誰がつくったのかということ以上に、どうしてこのつくり方なのか、なぜこの材料なのか、なぜこの特徴なのかを、とても丁寧に消費者に説明することを心がけている。

今年の初めに期間限定で販売したいちごの生ガトーショコラも実にMinimalらしいものだった。同社が扱う商品のなかでも、ベトナムやインドのカカオ豆を使ったチョコは際立った酸味が特徴的で私はいちばん好きなのだが、この生ガトーショコラは、香りが豊かで絶妙な酸味を醸し出すいちごを使うことで、見事に味をマッチさせている。

いちごはMinimalの職人が自ら探し訪れた香川県の農園から特別に仕入れた希少な「女峰」という品種を採用しており、紅茶やコーヒーだけでなく、スパークリングワインなどにも合う味に仕上がっている。このように、Minimalのことを知らない人たちに、ついつい語りたくなるようなストーリーが用意されているのだ。
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文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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