ちょい足しで本場の味になる調味料も。都内に増えた中華食材店の楽しみ方

中華食材アンテナショップ「本味主義」は横浜の関内にある

中国語圏の人たちが日本に来て店を構えて出す料理を、筆者は「チャイニーズ中華」と呼んできたが、このところ東京とその近郊で、それらの店とともに増えているのが、珍しい食材や調味料、酒、ドリンク、お菓子などを販売する中華食材店だ。

日本に住む中国の人のための中国語情報誌「旅日」(アジア太平洋観光社刊)の2020年秋号では、首都圏近郊に中華食材店が60軒以上あると紹介している。小規模の店まで含めるともっと多いのではないかと思われる。

中国食材店でしか手に入らない調味料


筆者が主宰する東京ディープチャイナ研究会の会員で、板橋区在住の松田えみさんは、近所の中華食材店をよく利用する。彼女がその店でよく購入するのは、老干媽(ラオガンマ)や鎮江香醋(黒酢)だという。

「老干媽はラー油の瓶詰です。日本の『食べるラー油』に近くて、種類もいろいろあり、トウガラシのほかにザーサイやピーナッツなどの具材が入っているものもあります。

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老干媽は元祖「食べるラー油」といっていい

鎮江香醋は中国の代表的な黒酢のブランドのひとつです。原料はもち米、麦ふすま、塩、砂糖で、保存料や着色料などの添加物はなく、日本の黒酢よりもずっと黒っぽく、うまみのアミノ酸も多いので、健康のために毎日飲む人もいます。

鎮江香醋の使い方としては、私は老干媽と合わせて水餃子のタレにしています。唐揚げにレモンを絞る人には、これをレモン代わりに使うのもよいでしょう。酸っぱいものが苦手な人でも、酸味がまろやかなのでむせることがありません。バルサミコ酢を垂らして食べるものなら、生ハムでもクリームチーズでも合います。また、ドレッシングでもお肉のつけダレでも美味しくいただけます」

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鎮江香醋は江蘇省産で、保寧醋(四川省)、老陳醋(山西省)、永春老醋(福建省)とともに中国四大黒酢のひとつ

松田さんは、このような調味料のほかに、冷凍餃子やナツメもよく買うという。

「中華食材店の冷凍餃子は種類が豊富で、豚肉やエビ入りだけでなく、ニラ玉や酸菜(中国東北地方の発酵白菜)など10種類以上はあります。私が好んでいるのは豚肉とナズナ入り。中国ではナズナは薬用植物で、上海風ワンタンの具材によく使われます。

ナツメは多くが新疆ウイグル産で、鉄分をはじめミネラルやビタミンB群、食物繊維などが豊富に含まれ、女性にとっては美容食といわれています」

こう語る松田さんは、日本語教師と太極拳導師というふたつの顔を持っており、中国各地から来日した生徒と都内のチャイニーズ中華の店に食事に行ったり、一緒にキッチンに立って料理をつくったりして休日を過ごすという。
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文=中村正人 写真=東京ディープチャイナ研究会

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