捨てられたごみが、その後どこへ行き、どのように処理されるのか、考える機会も少ないのではないだろうか。肉や魚が載っていた食品トレーは、燃えるごみなのか、資源ごみなのか、そのまま捨てるのか、一度洗ってスーパーにある回収ボックスに出すのか。地域によって処分の方法はそれぞれ異なっている。
実は、日本では一般家庭のごみを処理するのに2兆円もの税金が使われると言われている。国内のごみ焼却場の数は1000を超え、焼却ごみ量(3500万トン/年)とともに、世界で最も多いという事実はあまり知られていない。
世の中が便利になり、ごみの分別ついての理解や認識があまりなくても日常生活をおくることができる。正直なところ、私自身も、日頃、最低限の分別をしているだけで、これまでごみについて深く考える機会はなかった。
そんななか、ごみについて45の分別を実践している、徳島県勝浦郡上勝町の暮らしを体験できる「HOTEL WHY」が、昨年オープンした。
上勝町は、徳島市内から車で1時間ほど山間部に入った人口1500名程度の小さな町で、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト(zero waste)宣言」を発表し、話題となった。「ゼロ・ウェイスト」とは、「無駄、浪費、ごみをなくす」という意味であり、そもそもごみを出さないようにしようという考え方である。
宣言以後、2020年には、上勝町ではリサイクル率が約80%まで高まった。日本全国のリサイクル率が約20%なので、この数字が驚異的であることがわかる。そのために、持続可能な生活のためのモデルとして、国内外からも注目を浴びている。
その上勝町にオープンしたHOTEL WHYは、「上勝町ゼロ・ウェイストセンター『WHY』」というゴミステーション(ごみの集積所)やコミュニティホールなどが併設された複合施設の中にある。
このホテルでは、町外から訪れた人たちが宿泊を通して、上勝町の推進するゼロ・ウェイストアクションを実際に体験できる仕組みになっている。私も宿泊して、その取り組みに感銘を受けたので、この素晴らしい体験をお伝えしようと思う。
上勝町ゼロ・ウェイストセンターの建物は空から見ると「?」(クエスチョンマーク)の形になっている。右側にある丸い部分がHOTEL WHY