100兆円超規模目前、ウーバー元CEOも参入する「中食市場」の行き先

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夜は外食に出かけ、友人や仲間とお酒を飲む。ありふれたシーンが失われつつある今、街中で飲食店の閉店を見かける機会も多い。

苦境を強いられる飲食業界で注目を浴びているのが、客席もイートインスペースもないデリバリー特化のレストラン、「ゴーストレストラン」を始めとする中食事業だ。デリバリーなどに移行することでコロナ禍でのリスク削減はもちろん、低コストでの事業参入者増加など市場活性化にも繋がりうる。

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拡大基調止まず、21年は159%増


外食・中食市場情報サービスを提供するエヌピーディー・ジャパンの調査によれば、外食業態(レストラン)は全体的に前年同月比10〜50%程度減少しているのに対し、出前は20年5月が204%増、21年5月が159%増と好調だ。

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2021年6月と2019年6月を比較すると、外食は金額市場規模・客数(食機会数)・客単価全てが減少しているのに対して、中食は金額市場規模5.2%増、客単価7.7%増と成長が続いている(NPD Japan,エヌピーディー・ジャパン調べ)。

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外食産業は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、アルコールの提供制限や時短営業の影響が大きい。一方で飲食店の支援や食の楽しみを求めて、デリバリーやテイクアウトなど中食のニーズが増加し続けている。Uber Eatsなどシェアリングフードデリバリーの認知拡大も寄与していると考えられる。

食ビジネスにブレイクスルー、料理人にはチャンスも


上記の情勢から、飲食店は家賃・人件費を中心としたコスト削減に追われている。利益を出す機会が減っているのだから、コスト削減に努めるしかない。そこで注目されているのが、ゴーストキッチンやゴーストレストランだ。客席など店内での飲食機能を持たず、デリバリー・テイクアウトに特化するレストランのことを指す。

この業態であれば、埋まらない客席を持ち続け、一等地の高い家賃を払う必要も、感染症対策関連費やホールスタッフの人件費を払う必要もなくなる。スタッフが新型コロナウイルスに感染し、休業を余儀なくされるといった事態も避けられる。Uber Eatsなどのプラットフォームを利用すれば手数料は発生するものの、配達員を手配する手間すら要らない。

料理を提供することのみにコストを絞ることで、飲食店の開業ハードルを大幅に下げることができるのだ。これを機に、優秀な料理人がビジネスチャンスを掴む可能性も高い。
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文=齋藤優里花 編集=石井節子

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