ルーシーが入り浸るバーのマスター、トムの人物造形も非常に興味深い。彼はまず、人と深く関わることが嫌いで誰とも恋仲にはならず、アバンチュールだけを楽しむタイプの遊び人として登場する。
セックスした女性が朝すぐ帰るように工夫されたトムの部屋は、実は女性恐怖なのでは?というくらい徹底して防御的だ。
おそらく自分が変わってしまうことを恐れている彼が、次々間違った男を釣り上げてしまう店の常連であるルーシーをさりげなくフォローしてやっているうち、彼女に関心をもつようになるプロセスが繊細に描かれる。
(c) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
相手探しに必死で自分が見えないルーシーは、絵に描いたように残酷に振られる場面もあり、客観的にはかなり痛々しい女性だが、妙に純粋で正直な素顔が魅力的だ。4人の中でロビンと並んでかなりコミカルに描かれている彼女が、着飾った同級生たちに囲まれて追い詰められた小動物のような表情を見せる場面では、トムならずとも助け舟を出したくなる。
そして、トムの心を知らないルーシーが、やっと見つけた恋人との仲を有頂天で彼にアピールする場面は、出会いとすれ違いの皮肉をほろ苦く浮かび上がらせる。
後半、メグに接近してくるのは、ダンという青年。彼女より年下だがユーモアたっぷりで直球勝負のダンと頭の回転の早いメグとの、互いに探りを入れながらの会話は、「これで仲良くならなきゃ嘘でしょ」と思えるほどウィットに富んで楽しい。
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恋人同士となっても自己完結しているメグの態度が、独立独歩で人に頼りたくないというよりは、他人と関わって不安定要素を抱え込むことが怖いから、と見えてくるあたりで、この人はトムと同類だなとわかる。
意を決して人との深い関わりを選択する姉のメグと、やっと他人への依存から抜け出す妹のアリス。当初とは真逆の選択に至る2人だが、あなたはどちらに共感するだろうか。
連載:シネマの女は最後に微笑む
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