迷う人と迷わない人、アラサー独身女性それぞれの選択


一番強烈なキャラクターはロビンだ。豊満過ぎるゴムまりのような肢体を最新モードで包み、「限られた時間で街中と寝るのよ」と、毎日のようにアリスを夜の街に連れ出す。オールの後に完璧メイクとファッションで出勤するため、朝の街を駆け回って「準備」するドタバタのシークエンスが可笑しい。

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(c) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

図太くあっけらかんとしたロビンだが、時折妙なキレを見せ、終盤では意外な顔も明かされる。

この映画には、結婚や出産に迷う女性にとって刺さる言葉が散りばめられている。あれこれ悩みがちなアリスと正反対な姉のメグの、「今の世界では子供がいると自由になれない」という言葉もその1つだろう。

彼女は、自分が取り上げた赤ちゃんの可愛らしさに負けてとうとう持論を翻す。しかし夫は欲しくないので理想の精子提供者を見つけて妊娠するのだが、こうした選択も経済力を持ち自立心の強い現代女性の一典型という感じだ。

真逆の選択をするアリスとメグ


一旦決めるとどんどん前に進んでいく姉のメグに対し、妹のアリスはなかなか過去を精算することができない。ロビンの影響で思い切り羽を伸ばしハメを外した彼女は、結果、逆に元カレのジョシュが恋しくなる。

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(c) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

実はアリスは冒頭でジョシュと一旦離れて以降、終盤までに5回も彼に「再会」している。アリスの恋人依存は、背中のジッパーを下ろせなくてジタバタするシーンに象徴されているが、何も1人ではできない自分を見つめ直すためにニューヨークに出てきても、メンタルはそう簡単には変わらないのだ。

元カレとの偶然の「再会」の間に、知り合ったリッチなシングルファーザー、デヴィッドとの短い恋が挿入される。妻を亡くした傷から癒えていない彼とは早晩別れに至るが、アリスの残したものが結果的に彼の勇気となる結末は暖かい。
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文=大野 左紀子

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